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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
流氷の微睡み4
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最低限、子供を守る事にだけは手を抜くまいと決めている」
「そんなこと言って、助けに来るのが遅れたッ!!」
「すまない」

 リックは二人に頭を下げた。言い訳する気などなかった。
 二人が暁家の二人と共にテロリストと交戦してからリックが到着するまでの時間は、あの場の四人にとって途方もなく長く感じた筈だ。異常を認識してから全速力で現場には向かったが、こちらが全速力だったことと子供が感じた恐怖は別のものだ。自分を正当化する理論たりえない。BISも非常時の為の代物であり、本当は生徒が使うまでもなくリックが事を片付ければ要らないものなのだ。

「万一のことを想定していたつもりなのに、全然ダメだった。今回お前らが怪我をしなかったのは奇跡みたいなものだと思っている。そして奇跡に二度目はない」
「……ちょっとリック、私にも責任があると思うんですけど?一人だけ悪者顔してすごい疎外感を感じましたけどー?」
「お前にGPSを任せた俺の失態だ」
「それ優しさが一番つらいってやつだからねッ!?んん、おほん!とにかく、私も最善を尽くせませんでした。ごめんなさい」

 リックに合わせてルーシャも頭を下げる。
 頭を下げただけで下がる剣呑はそうそうない。謝罪そのものには意味がない。
 ただ、己の失態をそれとして受け入れているという、大人特有の意志表示だ。それは子供には意味のない、或いは分かった風になっている卑怯な行いにも映るだろう。そのうえで、リックは顔だけ上げた。

「お前らが望む大人には、俺たちはなれないかもしれない。だが、お前らが俺の生徒である限り、俺は理想を追うことも守ることも諦める気はない。だから……虫のいい話だが、俺たちにもう一度チャンスをくれないか」
「ずるい言い方。二度目と言えば次は三度目とか言い出すじゃん、大人って」
「そうだ。こんなものは自己満足だ。大人はそれでしか自分のやることを示せないのかもしれない。お前が許す気も何もないといった所で、結局俺たちはお前らを守り続ける」
「……………」

 子供の怒りに理論も理屈もない。大人の怒りとて時折そうだが、子供のそれは込められたエネルギーの強さが大人とは違う。実際の所、リックは美音が今後一切こちらを信用してくれないかもしれないという予想さえ抱いていた。
 それでも行動しなければいけないのが大人であり、教師だ。
 行動しない大人は大人とは呼べず、何もしない教師は教師としての職務を全うしていない。
 どちらにしろ、茨の道しかない。それがリックの道だ。

 美音は俯いて、手を微かに震わせる。

「美音」
「うん……」

 美杏にまた促され、美音は前に出た。

「美音、大人のことは信用できないし許せない」
「ああ」
「大人なんて何もしてくれないと思ったから」
「あ
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