第七十三話
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先程俺に銃のことがバレた時とは全く違う、自分の身に危険が及びそうな時の顔色。
明らかに異常だった阿武隈の様子にただならぬ危機感を感じた俺は、ただ一目散に阿武隈を追い掛けていた。
「きゃああああああああああああぁぁぁ!!」
「ふへへへへへへへへ、ふへへへへへへへへ!!」
「待って待って待って待って待って!怖い!加古怖いってば!」
「……私達になにか落ち度でも?」
「うーん、逃チームだからじゃない?」
後ろでは変わらず缶蹴りが続けられているようだが、無視。
今後の俺に大きく関わりそうな気がしたので、ただひたすらに阿武隈の後を追い掛けて行った。
─執務室─
「…………頭痛が痛い」
僕は昨日買ったばかりの胃薬と頭痛薬を水で流し込んでいた。
おっちょこちょいが過ぎる春雨。
ふらっと抜け出す若葉を。
そんな若葉を追いかける冬華。
逃げチームを目の前にして逃げ出し始める阿武隈。
それを追う千尋。
他人は自分の思い通りにならないということを嫌という程理解し始めていた。ここまでとは思わなかったが。
「ちくしょう……千尋は後で説教、阿武隈は春雨にパス、冬華は夜中(自主規制)だ……」
苛立ちの余り、春雨の前でとんでもない事を口走ってしまう僕。まぁ、春雨と時雨はまず間違いなく僕らの夜の事情とかを知ってるだろうから良いとして。
「たっ!?たったったたた拓海さん!?なんてこと言ってるんですか!?」
いや本当は良くないけども、あえて完全スルー。
「……はぁ……まぁ、今回は説明しなかった僕が悪いよなぁ……一説明して五、六くらいなら理解出来るけど、十どころか、五十なんて夢のまた夢だもんなぁ……」
それが理解できて、きっちり配慮ができる人間が、最近言われている『提督としての適性』の一つだ。これが大輝さんや僕、千尋の親父さんなんかならともかく、艦娘である千尋に理解なんて出来る訳ない。
「……拓海さん、話さないと伝わらない事って、沢山あると思うんですよ。例え、幼馴染みだとしても」
春雨は戦況を伝えながら、そんな事を僕に提言していた。
「……いーぐざーくとりー」
「……すいません、英語じゃわかりません……」
「……?Das ist richtig.」
僕はそう呟いて、「それじゃあ、」と続ける。
「春雨も、伝えないと伝わんないよ?誰の事とか、なんの事とか言わないけどさ」
僕はそう言い捨てると、春雨から目線を逸らした。
僕のセリフを聞いた春雨が、顔を真っ赤にしたのは、言うまでもなかった。
僕は、自分に嫌気が差してきた。
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