第七十三話
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に、少しだけ頭を抱えつつ走る。毎朝木曾のランニングやらに付き合っていたおかげで、足にはそれなりの自信がある……結局、アイツには一回も勝てなかったが。
「みんなっ!もしここで止まってくれたら、撃ちません!」
「何っ!?」
「捕まえますっ!」
「ヤダよ!!」
「(……阿武隈、普通に面白いなアイツ)」
かなりノリノリな阿武隈に脳内で座布団を一枚渡していると、前方からガシャァンッ、という音が聞こえてきた。
「なんだ!?」
あの音は、間違いなくガラスが割れた音だった。
ここで、俺の脳内では、つい先程の光景──阿武隈がロープを伝って降りてきた光景が浮かび上がっていた。
「全員、こっちに逃げろ!!」
案の定、廊下の一番向こうの角から、脚とかから血を流しながら走ってくる加古の姿。
「きゃぁぁぁぁああああああっ!!」
再び悲鳴を上げる瑞鳳さん。まるで、遊園地に来てテンションの上がりまくっている女子高生の声みたいだと思った。ちなみに、俺は生まれてこの方遊園地に行ったことは無い。
「待てやゴルァアアアアアアアア!」
と、アニメとかだったら間違いなく目を真っ赤にしてそうな程の形相でこちらに走ってくる加古。手には何も持ってない。
……草食系も肉食系も両方居るっぽいなー。あと、偏食系も。
と、中々のピンチな筈なのにしょうもないことを考え始めていた。現実逃避だろうか。
「……すまん、阿武隈」
俺は帯刀していた軍刀を抜くと、阿武隈に向けて構えた。練習用の刃が潰してあるものではなく、真剣だ。
「……き、木曾?なっ、なっななな、なにしてるのー?」
「え?いやー、加古に比べたらお前の方が突破しやすいかなーって」
「……な、何言ってるの!?わたっ、私は銃を持ってるのよ!?」
「玩具の、な」
俺が指摘した途端、顔からサッと血の気が引いていった阿武隈。
「……そそそそそそんなわけ無いですよぉ」
「……声裏返ってるぞ」
どうやら隠し事は苦手らしい。脂汗をだらだら流しながら、足を止めて俺から目を逸らす。銃を持ってる手も震えまくってた。
……なんか可哀想だが、勝負の場では手加減無用。
「……大丈夫、痛いのは一瞬だから」
俺は軍刀を構え、距離を詰めようとする。
「…………い」
「……?」
「いやぁぁああああああああああああああああああああっ!!」
しかし、俺が動いたと同時に阿武隈も動いた。自分が降りてきた窓の方向に向かって猛然と走っていった。
……まぁ、要するにガン逃げ。
「へ!?は!?ま、待て!!」
思わぬ反応に一瞬度肝を抜かれた俺は、思わず阿武隈を追いかける。気のせいだと願いたいが、顔が真っ青になっていた気がした。
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