第七十二話 呂蒙、学ぶのことその四
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「あちらはそのおつもりですから」
「座して死ぬのは」
「嫌ですよね」
「絶対にだ」
こう言い切る太史慈だった。
「そんな馬鹿な理由で死んでたまるものか」
「そうですね。雪蓮様もそう考えられてます」
孫策もだというのだ。彼女達の主のだ。
「それは他の牧の方も同じですよ」
「そうか。それならばだ」
「出兵の可能性がありますね」
「そうだな」
こんな話が為されていた。次第に不穏な空気が覆いはじめていた。
そんな中でだ。孫権はだ。
呂蒙に対してだ。あることを尋ねていた。
「ねえ、一つ聞きたいんだけれど」
「はい、何でしょうか」
呂蒙は孫権に対して真面目な顔で応えた。
「何かあったのですか?」
「ちょっと砕けていいわよ」
孫権は呂蒙のその真面目さに苦笑いになってだ。こうも告げた。
「そんなに深刻な話じゃないから」
「そうですか」
「ええ。貴女は前は眼鏡かけてなかったわよね」
彼女のその片眼鏡を見ての言葉だった。
「それで今かけてるけれど」
「眼鏡ですか」
「どう?よく見える?」
くすりと笑ってだ。そのうえで呂蒙に尋ねるのである。
「その眼鏡。どうかしら」
「はい、よく見えます」
やはり真面目にだ。答える呂蒙だった。
「蓮華様に買って頂いたこの眼鏡、とてもよく」
「私はいいのよ」
ここでは少し苦笑いになる孫権だった。そのうえでの返事だった。
「ただ。よく見えるのね」
「はい、とても」
「よかったわ。それじゃあね」
「はい、それでは」
「その眼鏡を使ってね」
それでだというのである。
「これからも色々なものを見てね」
「そうさせてもらいますっ」
呂蒙のその声が力んだものになっていた。
「孫家の為に」
「御願いね。そういえばだけれど」
「そういえば?」
「貴女確か袁術と知り合いだったわよね」
話が変わった。袁術が話に出て来たのだ。
「それとあの曹操のところの眼鏡の」
「あのお二人とですか」
「そう聞いたけれど。昔は袁紹とも縁があったのよね」
「ええと、それはですね」
「それは?」
「多分蓮華様と文醜殿と同じだと思います」
孫権とだ。同じだというのだ。
「御二人も縁がおありですよね」
「ああ、文醜ね」
知っているという口調だった。明らかにだ。
「そうね。あの娘麻雀好きだけれど」
「同じ事務とか所とかいう組合か何かにいるとかで」
「ええ。曹操のところのあの軍師は今は別の場所にいると聞いてるけれど」
「かつては同じでした」
その呂蒙自身の言葉だ。
「他には張勲殿もでした」
「何気に強烈な顔触れが集ってる場所なのね」
「そうですね。あの関羽さんと曹操殿もどうやら」
「ううん、皆色々とあるのね」
「私もそう思います」
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