第6章:束の間の期間
第200話「戦いに備えて」
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れなら知らなくても当然か」
「実は私達はね、こっちで亡くなったとされた時に、遠い次元世界に飛ばされたの。そこでずっと生きていたのよ。……帰って来るのが遅くなってごめんなさいね」
「……そうだったんだ」
簡単に経緯を聞き、緋雪は微かに微笑む。
安心したような嬉しさに、僅かに目尻に涙を浮かべていた。
「……緋雪……」
「……また、会えたね。お兄ちゃん」
どこか虚ろな足取りで、優輝は緋雪に歩み寄る。
以前のような一時的なものではない、本当の再会を確かめるように。
「……おかしいな。また会えて嬉しいはずなのに……だと、言うのに……」
「……お兄ちゃん……」
「……どうして、こんなにも心が動かされないんだ……?」
しかし、それでも、優輝に感情が戻る事はなかった。
「(……ダメ、なのね……)」
「(もう、どうしようもないのかな……?)」
椿と葵は、落胆したように悲しむ。
ただ勝手に期待していただけに過ぎない。
だとしても、緋雪を前にしても兆しが見えなければ、そう思うのも無理はなかった。
「……大丈夫だよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから」
「そうか……ありがとう、緋雪」
感情を失った優輝を前にして、緋雪も悲しい想いはあっただろう。
だが、その上で気にしないと、それでも兄に変わりはないと言った。
「……あっ、お兄ちゃん、それよりも……」
「っと、そうだな」
周りが注目している事に気付いた緋雪が、優輝に催促する。
「行けるか?」
「少し待ってください……行けます……!」
召喚と同時進行で、ソレラが霊脈を通じて世界に干渉していた。
そして、霊脈を基点に大規模な結界を展開する。
「っ……はぁ、はぁ……これで、この結界内は時間の概念がなくなりました。神界に対しては効果がほとんどありませんが、この世界だけなら……」
「好きなだけ、鍛えられるという訳だ」
基点となった霊脈が出入り口となっており、広さは海鳴市をまるまる覆う程だ。
結界の外と内で時間の流れが違う、修行のための空間。
それが出来上がった。
「……なんてこった。概念も、理論も、まるでない。ただ“そうある存在”として成り立っているようなものじゃないか。この結界……」
「元々、“エラトマの箱”によって、既にこの世界の法則が曖昧になっているからこそ出来る荒業です。本来なら、抑止力としてこの世界の法則に沿うように修正されてしまいますから」
紫陽が結界の異常性に戦慄し、ソレラが結界について軽く説明する。
「足りない戦力、足りない力はここで補う他ない。……それでもなお、勝てるかどうか怪しいものだけど……」
「ク
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