第五章 トリスタニアの休日
第二話 最高の調味料
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恥ずかしくても我慢できるから」
「っぅ!」
ゾクリと背筋に震え、思わずルイズから身体を背け離れる。囁かれた耳を手で押さえ、きょとんとした顔を向けるルイズを見下ろす。
クッ、完全に虚を突かれた。自分がやったことを理解してないようだが、今のはかなりやばかった。
自分が何をしたのか理解していない様子のルイズに溜め息を一つつくと、軽くルイズの頭をぽんぽんと叩く。腰を引くようにしてルイズから離れる。
急に後ずさりする士郎に、ルイズは訝しげな視線を向ける。
「? どうしたのよシロウ?」
「……いや……気にするな。それよりもルイズ」
キョトンとした顔を向けるルイズに、顔を軽く振って気を取り直した士郎が、再度ルイズと視線を合わせた。
「何よ?」
「男のあしらい方を教えてくれと言ったが。つまるところ、客からチップを巻き上げたいと言うことだな?」
「ん……まあ、そう……ね」
もにょもにょと口元を動かしながらルイズは顔を背ける。
ふむと顎に撫でながら一つ唸り声を上げると、士郎は背を逸らし目の前にいるルイズの全身を見る。
全体の発育は決して良いとは言えないが、スレンダーとも言える。気品のある顔立ち、綺麗な桃色がかった髪は十分以上に魅力的た。くるくると変わる表情も可愛らしい。
黙っていれば誰もが振り向く美少女と言ってもいい……黙っていればだが。
結局はその全てを攻撃的過ぎる性格が吹き飛ばしてしまう……。
なら……。
「さっきの方法がダメなら……残る方法は一つだな」
「……それは」
人差し指を立てた士郎が口を開くと、ルイズはゴクリと喉を鳴らす。
「その方法は……」
チップレース二日目。
その日のルイズはいつもと違った。
「お客様お待たせいたしました。ご注文のワインと料理です」
ワインと料理がのったお盆をテーブルの上に置いたルイズは、客の視線が自分に向かうのを確認すると、キャミソールの裾を摘み一礼する。裾を摘み、頭を上げるまでの一連の動作に欠片も淀みがない。流石は公爵家と言ったところか、一つ一つの動きに隠しきれない高貴さが薫る。
頭を下げる。
たったその程度の仕草に、ルイズの前にいる客がワインに手を伸ばした形で固まっていた。
「それでは失礼いたします」
「あっ! ちょっっちょっと」
ピンッと背筋を伸ばし、客の前から去ろうとするルイズに対し、客が慌てた様子で声を掛けた。
ルイズは慌てることなく、ゆっくりと振り返ると、小さく笑みを浮かべた顔を客に向けた。
「はい? どうかいたしましたか」
「え! あ! その……」
振り返ったルイズの顔をまともに見た客は、ルイズの町娘と明らかに違う高貴な顔立ちに気付く
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