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剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第二話 最高の調味料
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ことである。ルイズにとっては幸いなのか不幸だったのか? その夜も『魅惑の妖精』亭は賑わっていた。
 暴れる客や、過度な接触を図ろうとする客を丁寧に退店頂くため士郎は雇われたのだが、厨房が忙しそうにしているのを見て口と手を出した結果。

「一番、五番テーブル出来たぞ持って行ってくれ」
「はいは〜い」
「へ〜これも美味しそうね」
「ねえっ! こ――」
「分かった分かった後で作ってやるから今はさっさと持っていってくれ」
「「「了解!」」」

 いつの間にか厨房で料理を作るようになっていた。
 シックな執事服の上に、スカロンから渡されたフリフリのフリル付きのエプロンを掛け、士郎は熟練した動きで料理を創りだす。次から次へと飛び込んでくる注文を流れるような動きで捌く姿は、執事と言うよりもコック長。コック長と言うよりも大家族のお母さんのようだ。
 休みなく鍋を振るっていた士郎は、壁の向こうにある客席を透かし見るように目を細めると、鍋を置き溜め息を吐いた。 

 あ〜……しまった。居酒屋なら情報収集に適していると思っていたんだが。
 はぁ……ルイズはまともに客の相手は出来ない、俺は口を出したばかりに厨房行き。こんなんだったら別の方法が良かったか? いや、まだここに来て二日だ。結論を出すには早すぎる。もう少し様子を見よう。ルイズにもいい経験になるだろうし。
 ……だが。
 
「シロちゃん」  

 これだけは勘弁して欲しいんだが……。

「シロちゃんは止めて欲しいんだがミ・マドモワゼル」

 背後から聞こえる野太い声に、背筋を震せながら振り返ると、目の前に怪人がいた。

「んもうっ。いいじゃないシロちゃん。可愛いわよ」

 怪人は男性ホルモンを振りまくように、全身をくねくねとくねらせながら近寄ってくる。思わず背後にある鍋を投げつけ逃げ出したくなる衝動に襲われたが、ぐっと堪えると代わりに引きつった笑みを向けた。

「男が可愛いと言われてもな」
「むぅふふふ。いいじゃない本当に可愛いんだから。そのエプロンも似合ってるし……まるでたっぷりのクリームでデコレーションされたケーキみたいで……じゅるり」
「おい」

 ぬらぬらと光る舌で唇を舐め上げ、ニコリと言うよりもニゴリと笑った怪人改めスカロンは、両手をわきわきと蠢かせながら士郎ににじり寄っていく。身の危険を感じ、士郎がスカロンから逃げるため足に力を込めると、

「シロウっ! ルイズがまた客をぶん殴ってるわよ! 早く来て!」

 厨房の出入口から切羽詰った様子の声が聞こえてきた。 

「っ! 分かったすぐ行く! そう言うことだミ・マドモワゼル。俺はちょっと行ってくるから鍋が煮立たないように見ていてくれないか」
「ん〜……ルイズちゃんにも困ったものね。まっ
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