94部分:九十四.常磐井相国
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九十四.常磐井相国
九十四.常磐井相国
常磐井の太政大臣殿が役所勤めをしていた時のことです。帝の勅命を持った武士が大臣殿に接見しました。その際に馬から下りたので大臣殿は非常に立腹してこう言いました。先程の武士は帝の勅命を持っていながら馬から下りた。あのような愚か者を朝廷に置いておくわけにはいかないと。そしてすぐにその武士を辞めさせてしまいました。
勅命というものは馬に乗ったまま高々と上に掲げて見せるものでありまして馬から下りたらそれは帝に対する失礼になるのです。この武士はそのことを知らなかったのです。ですがこれは知っていなければならないことです。太政大臣殿に気を使ったのかもしれませんがそれでも甚だ失礼なことです。むしろ辞めさせられただけで済んでよかったのではないのか、こう思う程です。本当にこうした失礼なことがあってはなりません。強く戒めとしなければならない話であります。帝の勅命です。それでこのような失態があったということ自体が甚だ恐ろしいことです。大臣殿を厳しいと言う人がいるかも知れませんがその方がむしろ誤りです。それどころか温情を示したと言ってもいいものです。そういうことがわからなければそもそも朝廷にいることはできません。ただ朝廷にいること、それが栄華というわけでもありません。最低限知っておかなければならないこと、身に着けておかなければならないことはあるのです。
常磐井相国 完
2009・8・16
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