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戦国異伝供書
第三十三話 隻眼の男その十二

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「今はこの国を治めてじゃ」
「そして北条家、今川家とですな」
「手を結んでな」
 そしてと言うのだった。
「信濃に向かおう」
「さすれば」
「そして優れた者はな」
「それがしの様にですな」
「召し抱えてじゃ」
「働いてもらいまするな」
「そうする、今のわしには二郎がおって多くの優れた家臣達もおるが」
 それでもとだ、晴信は言うのだった。
「やはりな」
「優れた家臣が多ければ多いだけです」
「頼りになる、そして信濃を手に入れてな」
「さらにですな」
「上野も手に入れたいが」
「それからは」
「西、美濃に出てそこからじゃ」
 さらにとだ、晴信は今は秘かにしている自身の考えを山本に話した。
「近江にも進みな」
「都に入られて」
「そこからじゃ」
「公方様をお助して」
「天下に号令する者となる」
 このことを言うのだった。
「公方様に管領にして頂いてな」
「鎌倉の幕府の執権の様なお立場で」
「そうなる、武田家は将軍は継げぬ」
 何があろうともとだ、晴信は言い切った。
「それは足利家と三河の吉良家、駿河の今川家の三家じゃ」
「はい、この三つの家は将軍になれますが」
「同じ源氏でも武田家は甲斐源氏じゃ」
「平安の頃からここにいて」
「足利家の流れとは違う」
 脚かが家の分家筋である吉良家そして今川家ともだ。
「だからな」
「将軍にはなれませぬな」
「そして甲斐の守護である」
 このことについても言うのだった。
「このことも絶対である」
「甲斐の守護、そして甲斐源氏の棟梁として」
「わしは幕府の管領となってな」
「天下に号令されますな」
「その時にあの二人を従えさせる」
「織田の吉法師殿と越後の長尾虎千代殿を」
「そしてわしの両腕とする」
 必ずという言葉だった。
「そうするぞ」
「ではその様にする為にも」
「一つ一つ手を打っていこう」
 こう言ってだ、晴信は本格的に動きはじめた。父を追い出し甲斐の主となったがそれははじまりに過ぎなかった。


第三十三話   完


               2019・1・8
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