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戦国異伝供書
第三十三話 隻眼の男その九
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「わしもそう思っておった」
「それでは」
「勘助、まずは百石じゃ」
 禄の話もだ、晴信は山本に告げた。
「そのうえでじゃ」
「それがしを召し抱えて下さいますか」
「軍師としてな」
「有り難きお言葉、それでは」
「これからもわしを助けてもらうぞ」
「わかり申した」
「さて、わしはこの国の主となった」
 あらためてだ、晴信は家臣達に述べた。
「このことはよしとする、しかしな」
「やるべきことは多いですな」
 大柄で確かな顔の男が言ってきた、その飯富だ。その脇には小柄で兎唇の者がいるが彼の弟であり武田の名家山縣家を継いだ山縣昌景もいる。
「我等は」
「そうじゃ、甲斐の国は貧しい」 
 このことをだ、晴信は飯富にも話した。
「それも非常にな」
「だからですな」
「田畑を切り拓きたいが」
「それもですな」
「この国は山に囲まれておる」
 国の地理のことも話した。
「そして田畑は少ない、しかも川がな」
「常に氾濫しますな」
「それも厄介なことじゃ」
「田畑は少なく皮も乱れている」
「こうした状況じゃ、ではじゃ」
 それならとだ、晴信は一つの断を下した。その断はというと。
「川に堤を築くぞ」
「まずはそこからですか」
「川に堤を築き民達をその氾濫から救う」
 そうするというのだ。
「そしてその整えた川から水を引きな」
「田畑もですか」
「増やす、祟り田の話を聞くが」
 甲斐にはその話もあるのだ、そうして甲斐の民達はそのことを恐れそこに新たに稲を入れることをしていないのだ。
 だがその祟り田についてもだ、晴信は話した。
「その川の水で何度も徹底して洗いお祓いもしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「一度徹底的に清めてじゃ」
 そうしたことをしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「祟りをなくし」
「そして稲を植えさせてな」
「田も増やしますか」
「甲斐で採れる米は少ない」
 甲斐の貧しさの理由の一つだ、それも言うのだった。
「ならばそうしてな」
「田畑を増やし」
「民達を貧しさから救う、あと葡萄じゃ」
 今度は果物の話をした。
「これも多く植えさせ世」
「葡萄をですか」
「わしが学んだところによるとこの国は葡萄を植えるのに向いておる」
「だからですか」
「あれを作ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「秋に食いまた干してじゃ」
「そうしてですか」
「冬に食わせよ、あと柿もじゃ」
 この果物もというのだ。
「そうさせよ、ほうとうばかり食わせてはならぬ」
「米をですな」
「少しでも多く食える様にする、そして他にも様々なものを植えてじゃ」
 そうしたこともしてというのだ。
「他の国に売って儲けよ、また金もな」
「金山ですな」
 晴信の姉婿の穴山が応え
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