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徒然草
83部分:八十三.竹林院入道

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八十三.竹林院入道

八十三.竹林院入道
 竹林院入道左大臣殿であられた西園寺公衝殿が太政大臣へと上り詰められるのに何の問題もなく極めて順調に進まれたのですが太政大臣になっても何も変わったことがないでしょうから普通の大臣で止めておこうと言ってそのうえで出家されました。洞院左大臣であられる藤原実泰殿もこのことを聞いていたく感激されて太政大臣に上られるという望みを持たれませんでした。
 頂上に上り詰めた龍はその後は急に下がっていくしかないのでしょう。後は悔いだけが残るものだと言われています。太陽は黄昏に向かい満月も欠けていくだけです。旬のものは腐るのみであります。森羅万象において言えることでありますが先が見えている物事というものはそれだけで破綻が近いということでもあります。
 何でも頂上というものがありますがその頂上に達したならば後は下がっていくだけです。絶頂の後には衰えがあります。栄枯盛衰は世の常です。永遠に栄えられるということなぞ絶対に有り得ません。太陽もまた同じで昇れば後は下がっていきます。だからこそ昼と夜があるのであります。月も満ち欠けがちゃんと存在しています。満月にもなれば新月にもなります。ありとあらゆる物事がそうなのです。人もまた同じ。栄枯盛衰はまことにこの世の絶対の摂理の一つであります。


竹林院入道   完


                   2009・8・5

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