第一話
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自分のポケモン欲しいなって思ってたから」
生まれたからには、ポケモンと共に暮らしたいと思うのは自然な流れだと思う。
できたら、ポケモンと一緒に遊んだり、可愛がったり……そんなことをしてみたい。
「そうか……それじゃあお前はもう夜九時だから寝なさい。細かい事は明日決めよう」
「うん、分かった。おやすみなさい、父さん、母さん」
僕は椅子から立ち上がると、リビングから出て、階段を上がり、突き当たりにある自分の部屋に入る。
後ろ手でドアを閉め、ベッドの反対側に置いてある本棚に歩み寄る。本棚には、たくさんの本が置いてあった。
「……ふふっ、ふふふふっ」
僕は、本棚の本を見比べながら、静かに笑った。急に体を動かしたらまた発作が起こっていますかもしれないから、可能な限り抑えて。
「やっと……やっと、ポケモントレーナーになれる」
そう考えると、ニヤけが止まらなかった。
モンスターボールの手触りはどんな感じなんだろう。初めて手に入れるポケモンはどんなのなんだろう。どんな性格なんだろう。どんなことをするのだろう……そんなことばっかり考えてしまって、とてもじゃ無いけど寝れそうにない。
「前にセンリさんが皆に見せてたのは……ケッキング、だったかな?あんなに大っきいのはちょっと怖いなぁ……ジグザグマみたいに大きくないのがいいかなぁ」
僕はそう呟きながら、昔から読んでいるお気に入りの本を手に取る。
僕のように臆病な主人公が、仲間のポケモン達と共に遠いシンオウの地を旅するという、ありがちな話だけど、幼い頃はポケモン達と一緒に居る主人公に憧れた。
まぁ、今でも憧れてるんだけどねと、軽く笑った。一緒に笑ってくれる人は居なかった。
「……旅に、出れないかな」
ポツリと、つい口に出してしまった。僕がこの本を読んでから、一番憧れていた所。
この本を読みながら、何度も自分がもしも旅に出れたら……なんて想像をしただろうか。それこそ、喘息で苦しんだ回数くらい……とは言い過ぎか。
でも、今の僕の身体じゃあ、どうすることも出来ない。
「……寝よう」
暗くなってきてしまった気分を晴らす為に、僕は本を戻して、いそいそとベッドに潜る。
しかし──どうにもなかなか寝付けない。
暗い気分になってしまったのは、言ってしまえばいつもの事だが、今回ばかりはワクワク感があるからか、興奮して寝れそうにない。
結局僕は夜中の一時くらいまで、目をつむっては開き、つむっては開きということを続けることになった。
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