第二章
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「その歌手の方が」
「何かありましたか」
「急に声が出なくなったのです」
「歌手の人が」
「はい」
校長は志賀に暗い顔で話した。
「そうなのです」
「では」
「はい、何とかなればいいですが」
「そうですか、少しです」
「少し?」
「その歌手の人にお会いしたいですが」
志賀はこれが神託かと思ってそれで校長に話した。
「いいですか」
「はい、では街の駅前のホテルに行かれたら」
「そこで、ですか」
「泊まっておられるので」
それでと言うのだった。
「私からも連絡を入れるので」
「それで、ですか」
「合われて下さい」
「それでは」
志賀は校長の話に頷いた、そうしてだった。
石川と共に今度は駅前のホテルに向かった、そこで校長から事前に連絡を受けていた歌手と会った。歌手は若い黒い毛の猫人の男だった。
歌手は二人とホテルのロビーで会った、すぐに紙にペンでこう書いてきた。
『はじめまして』
「はい」
志賀は言葉で応えた、そして二人で旅の冒険者だと偽の名前も出して名乗った。歌手は二人にこう返した、紙に書いて。
『ジョージ=オグバーンといいます』
「オグバーンさんですね」
『そうです』
「お話は聞いています」
『僕の喉ですね』
「急に声が出なくなったのですね」
『医者に診てもらいまして』
それでとだ、歌手は志賀に答えた。
『何でも特別な症状で』
「特別な」
『何でもエルフの妙薬でないと』
「エルフのですか」
『それでないとです』
紙に書いて志賀に話した。
『治らないとか』
「そうですか」
『ただ、そのエルフの妙薬は』
「この街ではですか」
『ないそうで』
「この街にもエルフの人はいますが」
『薬剤師、しかも』
歌手は紙に書いていった。
『その妙薬を作れる様な人は』
「いないですか」
『そう言われました』
「そうですか」
『その薬剤師の人がいるのは』
歌手はさらに書いた、書くのは速くしかも字が奇麗なので志賀も石川もすぐに読めてやり取りは楽であった。
『この街から離れた村だとのことです』
「ではですね」
『そのエルフの薬剤師からです』
「妙薬を貰えれば」
『僕の喉は治るとのことです』
「では今からです」
志賀はこれが神託だと内心確信しつつ歌手に応えた。
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