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憑依者の英雄譚
5話
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くん」

エイナさんの手が俺の頬をさわる。

「大丈夫だよ。最初に言った通りちょっと驚いただけだから。その魔法がどういったものなのか良く分からないけど、私はカッコいいと思うよ」
「エイナさん。……ありがとうございます」

そのまま俺は頬に当たられている手をそっと掴んだ。

「あの、すいませんでした」
「え、なんで謝るの?」
「そのエイナさんってエルフですよね?エルフと言う種族は潔癖なまでも他人と触れあうことを嫌う種族と祖父から聞いていたので」
「ああ、それなら大丈夫だよ。私は半分はエルフだけど半分は人だから。それにベルくんなら平気だから」

平気って、あれそう言えば。

「エイナさん、いつの間に僕のことを名前で呼ぶようになったんですか?」
「え?えーとなんというか成り行きで」
「そうですか。まあ、名前で呼んではいけないなんてルールはないんですし、俺は気にしませんから」

そのまま気を取り直して講義を続けた。

「はい、ここまでです。最後に確認です。ベルくん、冒険者は?」
「冒険してはいけないですよね?理解はしてます」
「ならいいんだけど。嫌だからね、今日会ったばかりの君が明日死んでしまうなんてことがあったら」
「分かっています」

会ったばかりの俺にここまで親身になってくれるなんてとてもいい人だな。
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