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通りだ。アイツは金の無駄遣いの多いせいもあるが。よく分からない武器やら食い物やら、上げだすとキリがないくらいにへんてこなものばかりを買う奴なのだ、キリトというのは。
「まあそれがアイツの面白いところだけどな……」
レタスをバンズに挟みながら独り言で苦笑する。前に会った時、キリトは、装備要求ステータスはやたら高いのに、耐久力は紙クラスのポンコツ級のハズレ武器を買わされていた。装備耐久は七十四層クラスの箱からのドロップ品でさえメンテナンス無しでも千回近い戦闘に耐えられる程だが、メンテナンスありきでも何十回というレベルだったはず。明らかなハズレだな、とエギルと一緒に笑ってやったことがある。キリト曰く見た目に惚れたとか何とか言っていたが。それにしたってステータスは見るはずじゃないのか、とは思う。
「よし、完成。さて、今日の攻略も頑張るか」
右手をフリックして、装備品欄から一括装備を指定する。高難度クエストで入手したブレストプレート、その上からジャケットを装備する。そして最後に背中には赤黒い、大きな両刃の剣。固有名《ブラッド・ツヴァイ》という名のこの剣は、筋力重視の片手剣ビルドを組んでいるキリトですら、重すぎて持ち上げるくらいが精いっぱいという程の重量のある愛剣である。そのおかげで、相手の武器破壊に高いボーナスが付くのだ。現にデュエルした相手の武器を意図的ではないにせよ粉砕してしまい、激怒させたこともある。しっかり弁償はしたが。あれも今となってはいい思い出だ。
「……じゃ、いってきます」
同居人が目を覚ますのは、いつも九時ごろ。寝つきが悪いとか言っているが、安心して眠れない、の間違いだろうと常々言っているのだが、頑として認めようとはしない。恐らく、俺に、そしてキリトに心配をかけまいとしようとしているのだろうが、その方が心配になるというものだ。
ミュージェンの街はいよいよ、朝もやが晴れ始めて人通りも活発になり始めた。アインクラッドに生きる人々の、活動が始まる時間帯だ。槌音が鳴り、人を呼ぶ出店の店主を客寄せ文句。石レンガで出来た、少しロマンチックな街並み。
転移門へたどり着く頃には人通りも、いつもと同じくらいにまで増えていた。ざわざわとした喧噪も、いつも通り。何一つ、変わることのない《アインクラッド》の日常。皆の日常に変わりつつある、異世界の《いつも通り》。
「転移、カームデット」
人々の喧噪に紛れてしまうような声量でのボイスコマンドだったが、それでも転移門はしっかりと機能した。俺の身体を淡いブルーの光が包み込まれた瞬間に、ミュージェンとは全く違う、赤茶の石で構成された街へとテレポートさせた。
カームデットは、ミュージェンと比較するとかなり殺風景な街だが、それはミュージェンが発展していると
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