140悪鬼羅刹
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「ううっ、うあうっ」
『私には川澄舞お姉様の右手の魔物、姉には左手を植え付けて体を強化して貰えました。何も言わないで術が使えるのはそのお陰です』
それは純血の妖狐か、舞のようにハーフで凄まじい修練や研鑽を積んだ天賦の才がある人物にしかできない神々の行い。
舞の場合、十年に及ぶ自傷行為と、自己治癒による回復という苦行により成り立ったもので、只人が栞と同じことをすれば、術の負荷で脳や神経が焼き切れて即座に絶命する。
『本当なら心を食われて、本当の化け物になれたそうですね? でも私達は心までは食われず、相沢様に使い魔を抜き出して貰って、舞お姉様の体に返したそうです。月宮の術者も驚いてましたけど、純血の妖狐なら本当の奇跡が起こせるそうですね?』
物理法則を超え、あらゆる災厄を起こせる純血の妖狐。
その裏返しは、あらゆる奇跡を起こし、未来を読み、病を癒し、過去をも作り変える。
相沢祐一に選ばれた巫女は、命を繋がれ、病を癒され、神々の力を行使できるよう体も作り変えられ、術の詠唱も不要となった。
「何と、そんな事まで可能なのか?」
『でも、私達は今起こっている「災厄」の中心。天使の人形と呼ばれる相沢様の使い魔が私達を生かしてくれて、他の姉妹たちも救ってくれました。私も姉も、誰かの命を食べさせてもらって、無理に生かされている罪人だそうです』
最悪の答えを聞いて震えだす一同。目の前の姉妹は災厄そのもので、自分たちも生け贄となって食われる目前。
ここで栞も、自分のためにここまでしてくれて、弱い命を生かし続けてくれた存在がとても愛しく思えた。
弱い木に接ぎ木をしたり栄養を与え続け、何度失敗しても針の穴を通すような奇跡を繰り返し、目の前の鉢植えの植物が全部枯れないように支えてくれた愛おしい存在。
栞はここで天使の人形に語りかけた。
『天使の人形さん、ここにいますか? 私の声が聞こえますか?』
(うん、ここにいるよ)
自分の中、香里の中、それ以外の分体も感じ、ここにいないのは佐祐理の中の一弥ぐらい。
分家の全員が呪いの塊のような存在が出現したのに気付き、今回の災厄の巨大さに恐れおののいた。
『良かった、この中に、あゆちゃんを呪い殺した犯人はいる?』
もしそんな奴がいれば、全員食料に加工して、この世のあらゆる苦痛を詰め込んでやり、地獄以上の苦痛を与え続ける。
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