第二章
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……はや…く……に…にげ…て…。」
細々とした声はやっと紡いでいるかのようで、やはりそこには意志が宿っているとしか思えなかった。
「シュテットフェルト、早く離れろ!」
そこへ不意に声が上がった。振り返ると、そこには魔術師と神聖術者らを従えた第二皇子クラウェンの姿があった。
クラウェンは直ぐにシヴィッラに駆け寄って問った。
「シヴィッラ殿、これは一体どうなっているのだ。」
「説明は後です。先ずはあの"影"を神聖術者の光の術で拘束して下さい。」
「相分かった。」
そう言うや、クラウェンは直ぐ様神聖術者らに伝え、術の行使を促した。術者らは直ぐに詠唱を始めたが、その刹那…。
− グシャッ… −
目の前の光景に、シヴィッラは茫然と立ち尽くした…。
"影"に抱かれていたシュテットフェルトが…まるで人が虫でも潰したかの様に潰されたのだ…。その力は凄まじく、彼の首が落ちて転がる程であった。
「あ…あああああ…!」
シヴィッラは叫んだ。そして…死したシュテットフェルトの元へと駆け寄ろうとした所をクラウェンに羽交い締めにされた。
「止せ!もう間に合わん!」
「嫌です!彼は私の親友!私の姉の夫であり家族なのです!」
「それでもだ!貴女には何の力も無いではないか!」
クラウェンにそう言われ…シヴィッラは我に返った…。
「あ…ああ!」
そうして天を仰いで泣いた。
神聖術者らは光の鎖で"影"の周りを包囲し、徐々に追い詰めてゆく。
しかし、その"影"は瞬時にシュテットフェルトの屍を取り込んで膨張するや、四方に巡らされた光の鎖を撥ね退け、一瞬で霧散して消えたのであった。
「クソッ!取り逃がしたか!」
クラウェンは舌打ちし、直ぐ術者へと気配を追うよう指示を出して後、未だ泣き崩れているシヴィッラを立たせて力強く抱いた。
「私とて悲しい…。あれは人一倍優しく、皇族には不向きであったが、誰よりも優れた人物になった筈だ。悔やまれてならないよ…。」
「クラウェン皇子…。」
「今は泣け。明日からは泣いてはいられまいから…。そして覚えておけ…私も家族だからな。」
「…皇子…。」
そしてシヴィッラは、クラウェンの胸で涙が枯れるまで泣いた…。
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