第二章
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名を連呼しながら一点を凝視するだけであった。その先をシヴィッラが見ると…。
「あ…あれは…!」
視線の先にあったもの…それは正しく〈妖魔〉と言えた。
それは世に言う第四位の大妖魔〈シャッテン・ガイスト〉である。
直訳すれば"影の霊"であるが、それは正しく?影?そのものであった。
この妖魔は人の影の中に潜み、精神を腐食させてゆく妖魔であり、中程の街の住人全てを狂わせた記録も残されている。それでも第四位なのだから、妖魔と言うものはそれだけで人智を超えている。
シヴィッラがそれを見た時、それはまるで女性…いや、そう思いたくはなかったが、彼女には姉のマリアーネのように見えた。
恐らくは…シュテットフェルトにも同様に見えていたに違いない…。
「シュティ、しっかりなさい!」
そう怒鳴りつけるや、シヴィッラはシュテットフェルトの頬を思い切り平手で打った。
すると、今まで何の反応も見せなかったシュテットフェルトが我に返り、心配そうに見ているシヴィッラに気が付いた。
「シヴィー…私は…。」
「分かっています。姉を…マリアーネを取り戻したかったのでしょう?でも…そんなこと人の身では不可能な事くらい、貴方にだって解っている筈です…。」
そう諭すようにシヴィッラが言うと、彼は俯き唇を噛みしめた。
「それでも…会いたかった…。」
「その想いは分かります…ですが、あれをご覧なさい。あれはただの影…。あんなものは姉どころか、人ですらありません。」
そえシヴィッラが言った時、ふと…誰かが喋った。
「あ…ぁ…シュ……ティ…な……ぜわ…た……しは…」
その声は紛れもなく…マリアーネのものであった。その声を聞いたシヴィッラは目を見開き…あることを思い出して戦慄した…。
「シュティ…貴方、まさか…姉の亡骸を…。」
シヴィッラの問いに、シュテットフェルトは答えようとはしなかった…。だが…その沈黙こそが何よりも“答え”なのだと分かると、シヴィッラはシュテットフェルトを見据えて怒鳴った。
「何と言う事をしたの!姉の…貴方の妻の亡骸を冒涜するなんて!」
シュテットフェルトが行使した術は、本来ならば獣を使って行うものである。それも、生きた獣で…。
だが、シュテットフェルトはそれを人の亡骸で…自分の愛した人の死せる肉体で行ったのである。シヴィッラに許せる筈もない…。
「いくら会いたいと言って…まさか…こんな真似をするなんて…。」
シヴィッラがそう責めると、シュテットフェルトは何を思ってか、未だ揺らぐだけな影へと向かって歩き出した。
「何をする気!?駄目よ!それに魔術は効かないわ!神聖術者であれば今なら…」
シヴィッラがそこまで言った時、"影"は一気にシュテットフェルトへと近付き、まるで彼を抱くような素振りを見せた。
「…は
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