第二章
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のであった。
暫く一人で考えれば、彼ならば正しい道を選択してくれる…シヴィッラはそう考えたのだ。きっと時が解決してくれると…。
だが、それが逆に仇となった。その日、シュテットフェルトが考えを口にしたその日に、彼女は研究資料を全て処分すべきだったのである。
その数日後、シヴィッラの元へと見知った守衛が訪ねてきた。
「どうされましたか?」
「こちらにシュテットフェルト皇子はお見えではありませんか?」
「えっ!?皇子が…城から居なくなったのですか?」
「はい…昨日の夕刻までは確かに居られたのですが…。」
シヴィッラは嫌な予感がし、守衛と共に以前研究に使っていた小さな屋敷へと馬を走らせた。
「やはり…。」
屋敷に入って見ると、幾つもの資料が消えていることにシヴィッラは直ぐに気付いた。そのどれもがシヴィッラの予想していたもの…彼女自身が禁忌としたものはがりであった。それらは全て生命と魔の融合魔術である。
キメラと呼ぶには余りにも禍々しいそれを、シュテットフェルトは行使しようとしているのである。
「全く…急がなくてはなりません!あなたは直ぐ、皇帝に皇子を大々的に探すよう進言して下さい。このまま下手をすれば…国を滅ぼす大惨事になりかねませんから。」
「しかし…私なぞがどう申し伝えれば…」
「皇子が禁呪を行使ししようとしている…それだけで充分です!」
そう言って守衛を直ぐに城へと向かわせるや、シヴィッラも馬を走らせて彼を探した。
しかし、それらしい場所には彼を見つけ出せず、シヴィッラは馬を止めて考えた。そして、一つだけ行っていない場所があることに気が付いた。
− マリアーネの墓所…。 −
最初、シヴィッラは術式に必要な生命力溢れる場所を中心に探したが、死者の眠る墓などは念頭になかった。
だが…誰か、または何かを贄とするならば、生命力のない墓所でもそれは可能。いや…寧ろそうした方が成功率が上がる可能性があった…。
「シュティ…この考えが間違ったものであってほしい…。」
彼女は直ぐに馬を駆けさせ、マリアーネの葬られた墓所へと向かったが、その途中で不意に轟音が響き、向かう先には真っ黒な雲が湧き立った。
「まさか…!」
シヴィッラは驚き惑う馬を宥め、その先を急いだ。
ただ、何事も無ければと祈りながら…。
そこに着くと、暗雲に覆われたその下に目を疑った。まるで焔の塊が落ちたかのように地面が抉れ焼けており、その中心に彼…シュテットフェルト皇子が立っていたのである。
「シュティ!一体何をしたんです!」
馬から降りて彼へと駆け寄ると、シヴィッラは彼の表情に戦慄した。
その表情は正しく…狂気に満ちていたからである。
「シュティ!目を覚ましなさい!」
そう怒鳴るものの、彼は「マリアーネ…。」と
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