第二章
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ーネの事が忘れられない…。」
「それは当たり前です。私とて姉の事を忘れられません。しかし…姉が今の貴方を見たら、きっと怒りますよ?」
「そうだろうな…。だが…彼女はいないのだ…。」
そう言うや、シュテットフェルトは椅子へと戻り、疲れた様に座ると、シヴィッラにも座るよう促した。
シヴィッラはテーブルを挟んだ向かいに座ると、テーブルの上にバスケットを置いた。
「大して食べていないのでしょう?」
そう言って、彼女はバスケットからサンドウィッチやパイなどを取り出した。それらは全てシヴィッラが作ったものである。
「何だか懐かしい…。あれから然して経っていないと言うのに…。」
それを見て、シュテットフェルトは思い出していた。
以前には、こうしてシヴィッラが作ってきてくれたものを囲み、三人で談笑しつつ過ごしたものだと…。
そしてシュテットフェルトはパイを一口頬張ると、それは甘酸っぱいベリーの味がいっぱいに広がり、後から薔薇の香りが鼻を擽った。
「これは…。」
「シュティ…貴方が私達姉妹のために改良してくれた薔薇と木苺を使って作ったものよ。」
シヴィッラがそう答えるや、シュテットフェルトは涙を零した。
「逢いたい…。」
たった一言。だが、それはどこまでも重く響いた…。
シヴィッラとて姉に会いたい…こんなに早く逝くとは、夢にも思っていなかったのだから…。
「そうですね…。私も会いたいです…。」
「では…会おう…。」
そのシュテットフェルトの言葉に、シヴィッラはハッとして顔を上げて彼を見ると、その表情は危ういものであった。
「まさか…まさか貴方、あれを使おうなんて思ってませんでしょうね?」
「?????。」
シヴィッラの言った「あれ」とは、二人で考え出した術式のことである。それは偶然の産物であったが、ある種"悪魔的"と言えるものであった。
その術式は、虫や獣などに実体を持たぬ悪魔を術で縛り合成し、新たな生物…所謂キメラを創り出すもの。悪魔はその力を残して精神は消滅し、力を得た媒体は急速に変化して意思を持つ…。
「あれは…あれは駄目です!あの時も言いましたが、あの術式では死者を甦らせることなど不可能です!あれは妖魔を創り出す元となります。絶対に行使してはなりません!」
「なら…どうすればマリアーネを取り戻せると言うのだ!」
そう言って椅子を倒して立ち上がるシュテットフェルトに、シヴィッラは瞳を逸らさずに返した。
「禁忌を破ってまで姉を甦らせても、姉は絶対に喜びません。それは貴方も良く知っていることではありませんか。」
そう言うシヴィッラに、シュテットフェルトは背を向けて「帰ってくれ…。」と一言呟くように言った。
シヴィッラもまた、ここで何を言っても今は無理だと判断し、そのまま彼の私室を後にした
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