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魔術師ルー&ヴィー
第二章
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アーネの亡くなる前は守衛しか見掛けなかった場所でさえ、今は多くの兵がいる。気付かぬふりをしていたが、街中でさえ兵の姿が目立ってきていたことにシヴィッラは胸を痛めた。
 そして…税が少しずつ上がっていることにも気付かぬ彼女ではなかった。

― やはり…戦は始まると言うのかしら…。 ―

 シヴィッラには分かり切っていた。本来なら、疾うに戦は始まっていたのだ。
 問題は三国間に跨がる〈レベンディヒ海〉なのだ。
 レベンディヒ海は魚介類の宝庫として知られ、外海では得られない魚や貝なども豊富に獲れる。故に、その漁業権を巡りフルフトバール、リュヴェシュタン、そしてこのゾンネンクラールが争いを繰り広げていたのである。そこにミルダーンが介入してきたことから、随分と前から戦の話はあったのである。
 しかし、ゾンネンクラール皇帝ゲルハルト四世は、フルフトバールとリュヴェシュタンの二国と和解を結び、自国の権利を最小限に留めることで、この危うい和平を保っていたのだ。
 この和解により、フルフトバールもリュヴェシュタンも一応の解決と見做していたが、ミルダーンだけは事ある度にこの和解を崩そうとしていた。
 そこにミルダーンの魔術式の開発の話が上がり、それに危機感を募らせた各国は兵を増強し始め、魔術及び神聖術の研究が盛んに行われる様になったのである。
「たかが十年…されど十年…。」
 少し高くなった空を見上げ、シヴィッラはそう呟いた。
 三国の和解の際、マルクアーン姉妹はシュテットフェルト皇子と出会った。
 マルクアーン家の当主ベネディクト・フォン・マルクアーンは、当時皇帝の側近として仕え、彼が先に話した条件を皇帝に進言していたこともあり、和解条約の調印式には姉妹も同席を許されていた。その後の晩餐会にて、シュテットフェルトからマリアーネに話し掛けたことが切っ掛けであった。
 だが…こうも立て続けに不運が訪れるとは…シヴィッラさえ、この先に何があるのかは見当もつかなかった。
「シヴィッラ様、皇子はお会いになられるそうです。」
 不意に言葉を掛けられ、シヴィッラはハッとして守衛を見た。
「そうですか。それは良かった。」
「はい。少しはお元気になられたのやも知れません。」
 そう返すや、守衛はシヴィッラを皇子の私室まで送った。
 守衛が扉をノックして「お連れ致しました。」と告げると、中から「入れ。」と返ってきたため、守衛は扉を開いてシヴィッラを中へと通して後、静かに扉を閉めて立ち去った。
 中に入ると、椅子に掛けているシュテットフェルトを目にしたが…以前とは別人の様に見えた。
「シュティ…窶れましたね…。」
「そう…かな。」
 シュテットフェルトはそう呟くように返して椅子から立ち上がり、シヴィッラの元へと歩み寄った。
「どうしても…マリア
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