悪意の牙、最悪の謀 (後)
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やられた、な……。
「ランサー! ヘラクレスの背後に転移しろ! 今すぐに!」
アルケイデスの拳が空を切る。眼前にいたはずのクー・フーリンが掻き消えていた。
どう足掻いても俊敏に動ける体勢ではなかったはずだ。故に彼が消えたのは、錬鉄の鉄心がただ一画残していた令呪によるものだろう。背後に現れたクー・フーリンが、構えていた魔槍を解放する。
「――『刺し穿つ死棘の槍』ッ!」
過たず己の心臓を貫く魔槍を感じる。背後からの必殺の槍。これを受けては、さしものアルケイデスでも生存は不可能。黄金の果実もない。
己の敗北を認めた。三回戦い、三回とも、この最新の英雄によって己は敗れたのだと。
その場に崩れ落ちるようにして、アルケイデスは倒れ。
そして、アルケイデス『は』、二度と動く事はなかった。
「は――は、ハッ、は――ぁ」
士郎は息を吐き出す、喘ぐようにして呼気を整える。二騎の大英霊の全力戦闘をカルデアからの支援も無しに支えつつ、自身は固有結界を維持しながら、聖剣の贋作を無理矢理に造り上げ、あまつさえ死にかけた。
アラヤ識によって蓄えられていた、無尽蔵に近かった魔力が、このたった一度の戦闘で七割がた消費させられたのだ。なんて奴だと改めてヘラクレスへの畏怖の念を強める。
「よく、やってくれた。セイバー……ランサー」
労う。心からの感謝と、賞賛の心があった。
クー・フーリンは笑う。得難い強敵を打倒した歓喜が彼にもあったが、それでも。
「あんたがいたから勝てたんだぜ。つくづく思う、オレのマスターがあんたでよかったってな」
「……そうか。ああ、なら今後もそう在りたいものだな」
「それはそれとしてお腹が空きました。帰ったら祝宴をあげましょう」
「オルタ……お前な……。……いや、いいか。腕によりを掛けて作ってやる」
呆れるも、しかしすぐに微笑み、士郎はオルタの頭を撫でた。手を置くのに丁度いい位置に頭があるのだ。オルタは頬に桜を散らし、抗議するように主君を見上げる。
「……私は子供ではありません」
「いいだろ、別に。可愛いオルタさん」
「っ……」
「おいおい……あんま見せつけないでくれるか? オレも流石に気まずいぜ……」
「ん? そうか。ならやめとこう」
「シロウ、早く固有結界を解除してください。……帰ったら、此度の功に報いてもらいます。ええ、今夜は長くなりますよ」
その宣告に士郎は苦笑して、言われるまま固有結界を解除――
解除出来ない。
「ッッッ!?」
士郎は顔色を変えた。固有結界を維持する魔力を切ったのだ。にも関わらず、この心象世界が現実世界に塗り戻されない。
士郎の顔色の変
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