悪意の牙、最悪の謀 (後)
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を引き抜き、なんとか踏ん張るオルタにトドメを刺そうと巨槍を振る――寸前。彼は、最早力尽きる寸前のサーヴァントなど見捨てればよかったものを、断じて見捨てぬと詰め寄っていた。
「『永久に遥か黄金の剣』!」
「ッ……!」
マスターが自ら近づいてくるのに眼を見開き、しかしアルケイデスは応手を誤らない。己の限界を超えた投影に疲弊している彼を――最新の英雄を、大英雄は断じて甘く見ていなかった。
故に黒王の聖剣に遥かに劣る黄金の剣撃が不意打ちとなっても瞬時に反応出来た。巨槍を旋回させ贋作の聖剣の刀身を横に逸らし、その閃光の直撃を避ける。琥珀色をした鉄心の瞳と視線が合う。語るものはなく、アルケイデスは巨槍の穂先で彼を両断した。
「ぬ、」
予想外の手応え。鋼を打つそれ。
袈裟に切り裂かれた士郎が血を吹き出したが、躰が真っ二つにはならなかった。躰の内側に無限の剣があったような感触――半歩踏み込みが足りていれば間違いなくそれごと切り裂けたが、その半歩が足りなかった故に仕留め切れなかった。
「シロウッ!」
オルタが彼を支え咄嗟に飛び退く。追撃に出んとするも殺気を感じて背後を振り向く。己の主人を斬られ憤怒に燃える猛犬が復帰していた。
「『刺し穿つ』――!」
「……ッ!」
狙うは心臓、謳うは必中。その魔槍の真価に、アルケイデスは後退を考える。しかしそれは間に合わない、見事な不意打ち。故にアルケイデスは果断だった。
下がるのではなく、進む。自ら間合いを潰す踏み込みの速さはクー・フーリン以上。目を見開くクー・フーリンの魔槍を脇に挟んで掌で掴む。機先を制する無双の武量、彼はニヤリと嗤った。
「『天つ風の』――」
「野郎……! 薄汚ねぇ手でオレの槍に触れてんじゃねぇッッッ!!」
しかしクー・フーリンもまた負けていない。二度も宝具を奪われる醜態など晒さない。槍を掴む腕はそのままに、クー・フーリンは渾身の力でアルケイデスの腹部を拳で撃ち抜く。
神獣クリードの外骨格を纏った拳である。紅い棘が食い込みアルケイデスの内臓を殲滅した。ショック死してもおかしくはない衝撃に――しかし人間の忍耐、その究極に在るアルケイデスは怯まなかった。辛うじて心臓は無事、死んでいないのなら充分だ。瞬間的に回復するだろう。元よりこの白打の間合いも己のもの。巨槍を地面に突き刺し、拳を握った彼が巌のような鉄拳を振るう。
超雄同士が魔槍を奪い合うように片腕で握り合い、互角の膂力で真正面から殴り合う。アルケイデスは心臓と頭部を抉る拳のみを躱し、クー・フーリンを殴り抜く。
筋力は同等、耐久も等しい。だが白打の技量はアルケイデスが上を行く。しか
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