英雄の誉れ、花開く策謀
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トールはエミヤへの追撃をやめ、苦笑しながら立ち止まった。喋った!? と玉藻の前が眼を見開く。
ドレイクの一撃は、確かにヘクトールの砕けた霊基に届いていたのだ。叩き起こされた心地で、九偉人の一人である大英雄は兜を外す。
「おまけに、こんなザマだ。オジサンとしたことが、多数を相手に正面から戦うなんてなぁ。槍も投げてないしよ……」
「ヘクトール……」
「いよ! 見事だったぜ、弓兵。その巧さで接近戦は専門じゃないって、そりゃどんな詐欺だ?」
なんとか上体を起こしたエミヤに、ヘクトールはからからと笑う。そしてちらりと英雄船に眼を向けると、飄々と肩を竦める。
やれやれ……結局利用されて終わりかよ……。ガリガリと頭を掻いた彼は、ドレイクに体ごと振り向いて軽く頭を下げた。
「いや、感服した。いい頭突きだったよ」
「……へっ、こちとら度胸で生きてんでね」
「海賊だからかぃ? 国側のモンとしちゃ、狩るにゃちょいと難儀しそうだ。お陰様で死んでたのに生き返っちまった」
「そうかい。…そいつは重畳ってなもんだ。……で、まだやんの?」
「あー……それなんだが、オジサン、相手によるが見知らぬ誰かに利用されたり、勝手な都合で振り回されんのが反吐が出るほど嫌いでね……」
へらへらと言いながらも、彼の眼は煮えたぎる怒気に染まっていた。今も戦えってなぁ声が聞こえんのよ、と。
「んじゃ、そういうこった」
「おぉ、そういう事。はっはっは、迷惑かけた。にしてもそこのキャスター、出会い頭に金的狙いとかえげつないな? オジサン、びびったよ」
「きっちり防いでそれ言います?」
「はっはっは。……んじゃあ、ちょい先に逝くからな。縁がありゃ、今度は味方として戦わせてくれ」
ドレイクが肩を竦めるとヘクトールは応じる。彼は極剣を持ち上げ、それを首に添えると、躊躇う素振りすらなく薙ぎ払った。
自決して果てたヘクトールの霊基が、今度こそ完全に消滅する。エミヤは深く溜め息を吐いた。あのまま戦っていれば、敗れていただろう。呆れたような、感心したような眼でドレイクを見た。
「……規格外だな、君は」
「おうさ、規格に嵌められてちゃあ海賊なんざやってられるもんか」
「……ふ。お蔭で助かった」
アイリスフィールが今度こそ彼とドレイクを癒そうとする。しかしふと玉藻の前が声をあげた。
「あ、」
「……? どうかしたのかね」
「いえ、なんか敵さん降伏しちゃいましたよ?」
「なに?」
見れば、幼いメディアが英雄船の船上で、ネロへ聖杯を手渡しているではないか。ネロは困惑しながらもそれを受け取る。
イアソンはいない。メディアの防衛を突破したマシュが倒したのだ。
「……? カルデアに、通信が繋がらない……?」
そこで、
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