英雄の誉れ、花開く策謀
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るよりも先に肩口から突進し、彼を無理矢理に押し退ける。『アン女王の復讐号』の戦闘が決着した故に、駆けつけたアイリスフィールが宝具を開帳せんとする。来るな! エミヤが一喝した。
咄嗟に立ち止まったアイリスフィールの鼻先を聖楯が通り過ぎ、ドレイクの船のマストにめり込んだ。不用意に駆けていれば彼女の頭蓋が砕けていただろう。アイリスフィールはたじろいだ。
ヘクトールが馳せ、極剣をエミヤに突き出した。剣の間合いではない、切っ先は届かない。しかしエミヤは大きく身を横に倒して回避する。極剣が長大な極槍へ伸長していた。突き出すのと同時の形態変化である。
錬鉄の弓兵が苦悶する。額から脂汗が吹き出ていた。剣が槍に、槍が剣に、伸縮を繰り返し、腕の動きではなく手首の向きだけを見て回避せねばならない、マシンガンのような連続の刺突だ。彼の手の中で剣槍が伸縮する事で発生する乱打を莫耶で必死に凌ぐも、ヘクトール自身の剣撃と槍撃が交わると防戦すら覚束なくなる。
「ハッ――ハ、ハッ、」
喘ぐような呼気。エミヤの息が乱れた。流星の如き剣の刺突が、腕を突き出す速力に加速され、極槍へと伸びる。グンッ、と通常の槍術には有り得ない奇抜な加速がエミヤの目測を狂わせた。
肩を貫かれる。満身創痍のエミヤへ、ヘクトールは踏み込んだ。重傷であっても怯まない強靭な忍耐力である。槍から剣へ短縮しながら極剣を袈裟に振り下ろし、敢えて莫耶で防がせると、ヘクトールは更に踏み込んでエミヤの顔面を固い拳で殴り抜いた。
派手に吹き飛び甲板を転がるエミヤにトドメを刺さんとする『兜輝く』ヘクトール。そこへ、
「アタシを無視すんなぁッ!」
怒号を発したドレイクが至近距離から二挺の銃より弾丸を浴びせる。咄嗟にヘクトールは身を捻り、両手を床について自らの脚を斧として薙ぐ。ドレイクの両手を粉砕し、銃も破壊した。今は最も手強い戦士を確実に仕留めるのが上策、ヘクトールは一瞥も向けずエミヤに向かって行こうとし――
「ッ、虚仮にしてくれたねぇ……コイツは高くつくよ……。……アタシをォッ! 舐めんなって何度も言わせんな――ッッッ!!」
両手を砕かれ、武器を失い、それでもドレイクは怯まなかった。果断に突進したドレイクが、頭を後ろに逸らし、そしてヘクトールの後頭部に渾身の頭突きを見舞う。
兜を被っているヘクトールには効かない。しかし、彼はよろめいた。慮外の一撃だったのだ。
武器を失い、手も使えない。しかも人間だ。どうしてそれで退かないのか。合理的ではない。実際にヘクトールはなんの痛痒も覚えていない。頭突きで額が割れ、血を流すドレイクの眼光は手負いの獣だ。だがどこまでも己を信じる気高い自負の光が煌めいている。
「――ったく、オジサンもヤキが回ったかね……」
不意に、ヘク
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