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人理を守れ、エミヤさん!
英雄の誉れ、花開く策謀
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ぬき》」

 聖楯に阻まれる。やがて槍の間合いではなく、剣の間合いとなった。取り回しの悪い槍の間合いではない、しかしいつ間にか極槍の柄が短縮し、剣となっていた。分かっていたのにまんまと剣の間合いに近づかれたエミヤを責めるのは酷というものである。ヘクトールの間合いの見計らい方、距離の潰し方が余りに巧みだったのだ。
 剣の間合いに踏み込むや猛烈な剣撃を振るう。エミヤはなんとか双剣で身を守り、無数の火花を散らす剣戟を交わすも、不意に突進してきたヘクトールに奥歯を噛み砕かんばかりに食い縛る。
 楯の一撃(シールド・バッシュ)。全身の体重と膂力の込められた激烈な打撃がエミヤの双剣を砕き、両腕を粉砕し、その額が割られ血を噴き出す。

「ガッ、」

 殺られる――

「させるもんかいッ!」
「『水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)』!」

 ドレイクが銃弾の雨を見舞う。彼女の持つ聖杯によって、その銃撃はサーヴァントにも通じるようになっているのだ。ヘクトールは難なくそれを防ぐも玉藻の前の宝具が起動する間は稼げた。
 玉藻の前の神宝が一時解放され、彼女の呪力行使のコストが零となる。そして自陣の者に膨大な魔力供給を継続的に行い、それによって玉藻の前の呪力が急速にエミヤの負傷を癒す。

「っ、助かったぞ、キャスター」
「そーゆーのいいですから早く早く!」
「分かっている!」

 魔力の出し惜しみはしなくてよくなった。エミヤは双剣を更に投じ、最後に投影した干将と莫耶を過剰に強化して、その刀身を大剣の如くに膨張させる。

「――心技黄河ヲ渡ル(つるぎ、みずをわかつ)

 四方八方より殺到する陰陽の双剣。ヘクトールが眼を細めた。必中不可避の絶技、刀剣の檻。肥大した双剣をオーバー・エッジ形態へ移行させたエミヤが、自ら両翼の如き干将莫耶を広げて斬りかかった。

「――唯名、別天ニ納メ(せいめい、りきゅうにとどき)。――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われらともにてんをいだかず)……!」

 鶴翼三連。叩き込まれるそれらを、ヘクトールは初見で見切った。躱せないと。全弾は防げないと。故に彼は果断だった。正面から迫るエミヤにのみに意識を傾け、楯を構える。斬りかかったエミヤは歯噛みした。分の悪い賭け――それに嵌まるほどヘクトールは容易くない。
 彼の全身を、鎧を砕くほどの剣撃の嵐が彼の背後、真横から飛来する。それら全てに被弾して、鮮血を噴き出しながらもヘクトールはエミヤ渾身の斬撃を聖楯で受け、そして不毀の極剣(ドゥリンダナ・スパーダ)を巧みに閃かせてエミヤの左腕を切り落とす。

「オォ、ァアアア――ッッッ!」

 肘から先の腕を無くしながらもエミヤもまた負けてはいない。深傷を負ったヘクトールが聖楯で身を守
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