英雄の誉れ、花開く策謀
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してヘクトールを倒す必要はないのだ。カルデアの目的は特異点化の原因である聖杯の確保、そしてそれ以外の元凶の排除である。無理をしてエミヤらがヘクトールを倒す必要はない。しかし、ヘクトールはそうは言えない。彼は味方大将を守る必要がある。細々と堅実に勝つ、という訳にはいかないのだ。
多少のリスクは承知の上で、速攻で眼前の敵を屠るか、この場を離脱して大将の守備につかねばならない。この際僅かな負傷すら織り込んで、エミヤらを突破せねばならないだろう。何せネロとマシュの猛攻を、メディアだけで防ぎきれるものではないからだ。イアソンは一目見て分かるほど明らかに、伝承とは異なって武勇に長けていないのだから。
「そういう事だ。今暫く付き合ってもらうぞ、トロイアの英雄!」
――光明は見えた。しかし吹き付ける逆風がそれを掻き消す。
ヘクトールが仕掛ける。人間の限界……《《神代の》》人間の限界を極めた、神々の寵愛を一身に受けた大英雄をも翻弄した武略がゆっくりと牙を剥いた。
腰を落とし、楯を前面に構え、ヘクトールはじりじりとエミヤににじり寄る。彼の背には守るべき後衛と、ドレイクがいる。エミヤは弓兵なれど退くわけにはいかない。迎撃のために防戦の覚悟を固めた。楯に身を隠し、極槍の穂先がエミヤを捉えている。ジリ、とうなじが焦げ付くような焦燥を感じた。己の焦りだ、極槍を解析した故にエミヤは見抜けたのである。ヘクトールの取らんとする戦法が。
ブツッ――
――不意にカルデアとの通信が途絶えた。
それに、戦闘中故に気づく者はおらず。敏感に察知したであろう士郎は、固有結界の裡で死闘を繰り広げている。
「っ……」
不屈の闘志を宿すエミヤは気圧されない、しかし脳裡に響く警鐘が告げている。――負ける。斬られるか、突かれるか、薙ぎ倒されるか。無数に見える敗北の光景がありありと眼に浮かぶ。
ヘクトールの極槍が右腕のみの力で突き出される。先程までの両腕による槍撃ではない故に、それを捌くのは難しくない。されど容易くもない。彼へ目掛けて放たれる、玉藻の前の呪術による呪詛は効果を発揮しない。
「うっそぉ!? なにそれチート! チートですよ! なんですかそれ!?」
玉藻の前の批難など歯牙にも掛けられない。ヘクトールの聖楯は、担い手の状態異常を無効化するのだ。
ヘクトールは聖楯で身を守りながら、エミヤに牽制のような刺突を繰り返す。何が狙いなのかを見抜いていても応じない訳にはいかない。エミヤは分の悪い賭けに出るしかなかった。
「――鶴翼、欠落ヲ不ラズ」
双剣を投じる。叩き落とされるも構わず別の双剣を投影し、更に至近距離から投げつける。
「――|心技、泰山ニ至リ《ちから、やまを
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