英雄の誉れ、花開く策謀
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に残留霊基なのかと疑いたくなる。
青銅製の兜はT字型の鼻当て、孔雀のような羽飾りのついたコリント式兜である。それは硬度は勿論ながら、宝具として相応しい加護を被る者に与える。
ヘクトールの兜は被る者に戦時に於ける類い稀な洞察力を与えるのだ。生まれついての心眼か、鍛練の末に身に付けるそれか、はたまたその両方か。そして彼の身に付ける鎧は――と、不意に彼は黄金の鎧を脱ぎ捨てた。
「……?」
本当に、無造作に。兜輝くヘクトールは躊躇う素振りすらなく、『アキレウスの鎧』を体から剥ぎ取ると、海に捨てたのだ。その真意が読めず、警戒するエミヤや玉藻の前、ドレイクの眼前でおもむろにヘクトールが左手を掲げる。
その手に、トロイアを象徴する意匠の刻まれた丸楯が現れた。磨き上げられた鏡のようですらある、清らかな祈りの籠った護国の願いは楯となって彼の左手に収まる。そしてその身に装備されるのは所謂コート・オブ・プレート――腹部へ横方向に長い板を上から五枚ほど連結し、胸部は縦長の板を並列にして、背面と側部は縦長の板を並列に並べ、小さな肩当がある形状のもの。
深紅のマントが潮風に吹かれはためく。彼の纏う鎧兜は、パトロクロスを討ち取り戦利品として得たアキレウスの鎧ではない。彼自身の、シャルルマーニュ伝説にて名高いものである。
眼に見えて彼の佇まいが一変していた。ただでさえ力の差を感じさせる武威があったのを、明確に全ステータスが向上したような威圧感がある。それは彼の鎧によるものか。幸運と宝具以外の能力が増大している。
即ちこれこそが『兜輝くヘクトール』の本当の姿だという事。右手に握られる極槍とも合わさりその偉容は計り知れない。――しかし何故唐突に本気の姿勢を見せる? 先程までの装備でも充分にエミヤらを打倒し得た。仮に最初から本来の装備に変更するつもりだったのだとしても、もっと効果的な場面はあったはずだ。それを無視して、無意味なタイミングで無意味に切り札を晒して来るのは、ヘクトールほどの大英雄には似つかわしくない性急さと拙速だ。
――なんだ?
エミヤが油断なく新たに投影した双剣を構えていると、その耳にネロの声が届いた。
「バーサーカー、討ち取った! アーチャー、キャス狐、ドレイクよ! 今少しその者を抑えておけ! 余らが敵船に乗り込み決着をつける!」
――そういう事か!
エミヤの眼に理解の光が点る。ネロとマシュが敵残留霊基を討ち取り、敵本丸である英雄船に乗り込んだのだ。敵バーサーカーは強敵だったが、能力の劣化した狂戦士では、ギャラハッドの力を継承したマシュを傷つける事能わず、即席とは思えないネロとの連携で打ち倒したのである。
残すは敵大将らしきイアソンとメディアのみ。後はヘクトールさえ倒せば壊滅する。しかし無理を
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