悪意の牙、最悪の謀 (前)
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れるなど、痴呆にでも懸からん限りは有り得ん」
魔人の挙動を成すクー・フーリン、彼の見舞う魔槍術は変幻自在、豪快無尽だ。しかしアルケイデスもまた負けてはいない。偉大な師を戴く者同士、そして互いに師を超えた者同士、神域の果てにて鬩ぎ合う槍の極みは噛み合った。
魔槍が閃き、巨槍が轟く。激突は一拍の間に百を超えた。二騎の槍手の中心の気流が暴れ、ただの槍術の凌ぎ合いが固有結界を軋ませる。彼我の膂力はアルケイデスが微かに上回る、しかし槍術はクー・フーリンが上を行った。全くの互角、されど明暗を別けたのは対人技能に秀でた光の御子――ではない。超雄同士の激突は、その決着を見る前に援護が入ったのだ。
自らのサーヴァントであるクー・フーリンを、巻き込まんばかりの剣林弾雨だ。周囲を囲み浮遊した剣弾が躊躇なく降り注ぐ。アルケイデスは目を剥いた、光の御子を捨て石にするか、と。
されどそのような愚行など有り得ない。瞬間的にアルケイデスは悟った。剣弾の悉くが極めて位階の低い宝剣でしかないのだ。
「ヅッ!!」
アルケイデスに宝剣の霰が直撃する。アルケイデスのみに、だ。クー・フーリンは笑った。
光の御子クー・フーリン。彼の保有する加護に『矢避けの加護』がある。生まれついて飛び道具による攻撃で傷を負った事のない彼を、遠距離から傷を負わさんと欲するなら、高位の宝具による射撃でなければならない。
つまりクー・フーリンは、この低位の宝剣では被弾しないのだ。彼に当たる軌道の宝剣は不意に起こった風に逸らされ、あらぬ方へ飛んでいく。果たして宝剣の弾雨に晒されるのはアルケイデスだけだ。無論それらはアルケイデスになんら傷を与えられない。しかし彼の動作を阻害する効果はあった。互角の力量、故にこそその差は極めて大きくなる。クー・フーリンの赤眼がぎらりと光った。
「ゼァッ!」
「ぐ、」
激越な気合いと共に魔槍が奔る。多数の隙を生み出されたアルケイデスは急所を守るしかなかった。肩を抉る魔槍の呪詛に苦悶する。しかし体は停滞しない。巨槍に魔力を送って豪快に振り地面を叩く。発される衝撃が地面を隆起させ、クー・フーリンを間合いから押し出した。最果ての槍の風圧が剣弾をも弾き飛ばし、態勢を整えようとしたが――その隙を逃さず飛び込んできたのはオルタである。
先の意趣返しとなる剣撃は、柱の如くに膨張した黒剣の振り下ろし。完全に死角から振るわれたそれを、しかしアルケイデスは咄嗟に槍を掲げて受け止める。オルタの渾身の魔力放出が加わり、アルケイデスの両足が地面にめり込んだ。
後退したクー・フーリンが魔槍を投じる。真名解放によるものではない。されどルーンで強化された膂力によって擲たれたそれは、充分にアルケイデスを殺し得る。
受け止める、それは不可。躱す、それも不可。
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