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人理を守れ、エミヤさん!
悪意の牙、最悪の謀 (前)
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た光の御子が四肢に力を溜め。暴竜の猛りを秘めた黒王が、聖剣に膨大な魔力を充填してゆく。
 臨戦態勢は最初から整っていた。いつでも戦える。しかし、胸中に去来するものがあった。数奇な運命だと三者が感じていたのだ。
 共に冬木の三騎士でありながら、全員が力か属性が異なっている。弓兵に至っては同一人物にして別人で、人間で、マスターであり。そして再演前の弓兵はそのマスターの力の根源となっている始末。あまつさえ敵としているのは第五次聖杯戦争最強の英雄なのだ。可笑しさすら湧いてきていた。正しく三者三様、当時の配役からはみ出ているのである。
 だが不足はない、万の味方を得た以上の心強さを感じている。互いの力を知り抜き、同じ戦場を駆けた。強敵の座を経て戦友になったのだ。ならば細々とした合図や指揮など無用の物。ならば共通の敵を討ち果たすのみ。

「往くぞ、ヘラクレス。宝具の貯蔵は充分か?」

 その宣戦布告に、破れ掛けている神獣の裘の下で神性の霊基が笑んだ。
 三mを超える武骨な柄、切り立った二枚の岩盤が螺旋を描いた形状の穂先――最果ての燐光を纏う巨槍を旋回させ石突きで地面を叩く。
 巌のような指が巨槍に添えられ、『神の栄光』が構えた。堂の入った槍術の武練、武芸百般の武人の誇りが垣間見える。

 クー・フーリンが小さく笑った。最後の最後に立ち返ったのか。僅かにでも。
 ヘラクレスと呼ばれた巨雄は赫怒を覗かせていた。私をその名で呼ぶなと。――ヘラクレスとアルケイデス……同一人物でありながら、決して相容れぬ属性。それらが混ざっているのだ。

「不快な」

 騎士王は吐き捨てる。立ち返ったのではないと見抜いていた。意図的に混ぜられただけであると。故に強敵を迎えた高揚は無く、有るのは脳裡に鳴り響く警鐘への不快感。本来の騎士王よりも鈍化しているとはいえ、鋭敏極まる直感の鋭さが彼女の秀麗な美貌を歪めさせた。
 黒い聖剣が膨張する。黒々とした暗黒の魔力が噴出したのだ。周囲の味方への気兼ねはない。蒼き騎士王は自らの力を律し控えていたが、その反面である彼女は暴竜の力の解放を躊躇わない。

「踏み潰す」

 その身より噴き出る黒き波動は、ブリテン島の原始の呪力。既に開戦の号砲は鳴っている、元より仇敵なのだ。一対一の騎士道に則った戦いではなく、数の利を活かして蹂躙する事への後ろめたさなど欠片もない。彼女は赤刻の走る黒剣を握り締めると地面を蹴り抜いた。
 ジェット噴射も斯くやといった爆発が起こる。強力な魔力炉心が起動し、膨大な魔力が唸った。斬り込むのは黒い聖剣王アルトリア・オルタ。周囲の仲間を巻き込む訳にはいかなかった一度目、船上故に加減をしていた二度目の戦いの時とは違う、正真正銘の全力を発揮する。
 直線の速力ならばクー・フーリンの突進にも迫り、魔力放出
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