海賊の誉れは悪の華
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の線の外には出ない。故に悪は外道ではないのだ。善悪一対などと嘯きはしないが、相応の覚悟がある。末路がある。
悪の死に様はそれはもう惨めなものだろう。だが、だからこそ――自由なのだ。その自由を貶める者を赦さないのは、悪が悪であるが故である。
故に。
「テメェら……そのザマで『海賊』の旗を掲げられんのか? 無理だわなぁ。一時とはいえこの俺の船に乗ったモンが醜態晒しやがって……」
――自由を失った海賊に生きる価値なし。存在する意義なし。ましてやその骸を弄ばれ傀儡として捨て石にされるなど笑い話にもならない。
船長責任、などとも言うまい。アン・ボニー、メアリー・リード……彼女達が死んだのは黒髭の指揮が拙かったからではないのだ。弱いから死んだ、悪運が足りなかったから死んだ。悪の死は己のみの責任である。
だが、同じ悪、同じ海賊として、懸ける情けはある。死後の亡骸を弄ばれる……そんなザマ、己が死後に首を刎ねられ晒されたようではないか。
悪の死を利用するなとは言わない。しかしその誇りを汚すのなら……汚されているのなら、取り戻してやるのが海賊だ。
――銃撃の名手アンとカトラス使いのメアリーは海賊である。比翼にして連理、比類ない連携の殺しの技が悪の華。
エドワードは剣の達人でも、銃の名手でも、徒手空拳の荒事に長けるでもない。故にその阿吽の呼吸より編み出される死の網を潜り抜ける技能を持っていなかった。
エドワードは狂わない。巨大な自負がある。自由な悪が、あらゆる因果を己のものとする海賊が狂うなどあるはずもない。故に比翼連理の連撃に巻き込まれる事も厭わず、味方であるはずの比翼らの銃撃を浴び、斬撃を浴びても襲い掛かる血斧王の狂気を躱さない。
黒髭は満身創痍だった。全身に傷のない箇所などなく、己の血に塗れ、それでも不敵に笑う。
彼は殺されるだろう。秀でた筋力、化け物じみた頑強さと生き汚さがあろうと、それが通じる手合いではない。彼の銃撃は躱され、彼の肉体による打撃は届かない。多対一、同じサーヴァントである故にその差を覆せる力量がない。
大斧がエドワードを横殴りに殴打し、吐瀉を撒き散らして巨体がマストに叩き付けられた。跳ね起きた黒髭の胴を銃弾が貫通する。斬りかかってくるカトラスの刃で袈裟に切り裂かれる。黒髭は己の霊核に致命的な損傷が入ったのを自覚した。
メアリーを殴り飛ばす。カトラスで受けられ、自ら後ろに跳ぶ事で衝撃を殺された。
感情の欠片もなく己へ銃口を向けるアン。今にこちらへ飛び掛からんとするエイリーク。体勢を整え再び斬り込まんとするメアリー。黒髭は、血に濡れた口許を荒々しく手の甲で拭う。蓄えた髭に付着した血の脂が鬱陶しい。だが今は気にならない。
「大したもんだ……」
嘗ての部下の
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