139未来予知
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「静かにしろ」とポーズを取りながら受話器に集中した。
『この私に恥をっ…… 姉の方の膳に毒をっ…… 思い知らせてっ……』
次第に当主の顔が青くなり、目は見開かれ、口は開いて下がって行く。
『そのような…… お許しをっ……』
香里の予想通り、女中の頬を叩く音も聞こえた。
『強い下剤でもっ…… 広間で恥を……』
「おいっ、聞こえたぞっ! 何をしておるっ! やつを呼んで電話に出せっ」
それで十分だと思った当主は、受話器に向って怒鳴り付け、女主人を電話口に立たせた。
「聞いておったぞ、お前の失態は香里の「先見の術」で予めわかっておった。何か言い逃れすることはあるかっ?」
『いえ、私の本意ではありません、違いますっ、間違いですっ』
「わしの耳がおかしくなったとでも言うかっ? お前は予知の力を持つことが、どれだけ大事か分かっておらん」
『あの無礼な娘は何の力も持っておりませんっ、調べた通りですっ』
「馬鹿者っ! では何故わしが、お前が仕出かすことまで分かった? 証人もおる。香里はお前が毒を盛るよう命じて、逆らえば女中を叩き、できなければ下剤を盛って広間で恥をかかせるよう命じたのも全て予言したっ! 後で広間に来いっ、呼ばれるまで部屋から出ることは許さんっ、覚悟しておけっ!」
電話を叩き切ると、当主は香里に向き直って頷き、一礼したようにも見えた。
香里もようやく名前で呼ばれて、人間扱いされ、この家の化物と同類として扱って貰えたように思えた。
「よくやってくれた、わしもこの歳になって、始めて本当の予知を見た。これからも家のために役立ててくれ、頼んだぞ」
「はい、では、もう一度ご褒美を下さい、あたしは栞と違って金持ちじゃないので〜」
姉の言葉で吹き出しそうになるのを堪える栞。だが当主が自分から立って姉に近寄り、先程より薄く小さい祝儀袋を出すと、束ごと差し出したのに驚いた。
遠寄せなら褒美を投げてよこすのに、予知なら自分から動いて手渡しになる。そこで姉と自分の力の価値の違いを思い知った。
「これしか持っておらん、全部やる」
「ごっつぁんです」
香里関は、手刀で三方を切ってから、懸賞金?の束を受け取った。声も相撲取り風の声を出したので、栞も堪えきれずに笑った。
「ははっ、本当に面白い奴だ、さっきもあの女房を蹴り倒して踏んだのにはスカッとしたぞ。まあ、これは内緒だ」
口の前に指を当て、内緒のポーズを取る当主。
最初に見た時とは別人のように打ち解け、香里には本当の孫のように接し始めたのを見た栞は、姉の特技に嫉妬したが、物事は良い方に進んでいると思った。
「そうか、それにしても「千里眼」に「未来予知」か、この歳になってから、この世の宝玉が二つもこの手に転がり込んで来るとは…… これで本家の馬鹿共にもっ」
感極ま
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