138倉田家分家
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の何かの感触がして、引き出すと半分に割れた独楽が出て来た。
「どうぞ、お改め下さい」
また女性が近寄り、土にまみれた物体を布に包み、当主に差し出した。
「うおっ! やりおったぁ!」
木彫の独楽のような物を置くと、パンパンと柏手を打ち、拍手をしたとも、手に付いた土を払ったとも思える動作をして、座ったままドスンドスンと暴れながら喜んだ。
「がっはっはっ! 目出度いっ! 栞だったな、近こう寄れっ、褒美をやる」
自分の席を立ち、当主に近寄る栞。女主人に制止され、その場に正座すると、当主は懐から出した分厚い祝儀袋を出し、投げて寄越した。
「ありがとうございます、私なら誰が壊して埋めたか分かります、後ほど宴席でお伝えしましょうか?」
「いらんっ、目出度い日に角が立つ、今日は無礼講だっ!」
一礼して床の物を拾うと、当主に後ろ姿を見せず、後ずさって自分の座布団まで戻って正座した。
「ならもう一人っ、本家のクソガキにも落とせなんだ大将首を取ったのはお前かっ?」
「はあ?」
香里には意味がわからなかったが、自分が無作法なクソジジイに扇子で指されて怒鳴られているのだけは分かった。
「ご当主様は、相沢様と睦み合い、婚約者筆頭の立場を得たのはお前かとお聞きになっておられます」
クソジジイの言い方も、気取ったババアの言い分も気に食わなかったが、両親の立場も考えて一応答えてやった。
「そうですけど?」
秋子や妹から言われた通り、自分が祐一と婚約したと告げた。
正座すらせず、対等の物言いをする香里を見て、鬼のような表情をして睨む女主人。
「お前の力は何だっ? お前らの母親は、スリかコソ泥のような真似しかできなんだから、さっさと捨ててやったが、お前の芸を見せてみろっ」
母親をスリ扱いされ、カチンと来た香里は、こんなジジイに答えてやる必要は無いと思い、ヘソを曲げた。
「調べたんでしょ? 知ってるはずよ」
女主人が立ち上がって香里に制裁を加えようとしたが、当主が制止して止めさせた。
「良いっ、喋らせろ」
姉は機嫌を損ねてしまったようなので、栞が代わって答えた。
「秋子様のお言葉をお借りすると「少し先の未来を読み、周りの人を操り、どうすれば自分の思い通り動くか計算し、自分の望む未来を作る能力」と仰っておられました」
妹が「秋子様」などと言い出したので驚いて顔を見ると、いつか余命告知した時のような、能面が張り付いたような顔をしていたので、怖くなって目を逸らした。
「何とっ、未来を読むと言うたか?」
「はい、力に目覚めたのは最近ですが、学校での騒動はご存知かと思います。最初に祐一様のお種を頂戴したのは私でしたが、姉も倒れて祐一様のお情けを頂いてから、一週間と経たず弁舌一つで学校中を味方にし、放送局まで呼び
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