138倉田家分家
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敷の門を抜け、車寄せまで迎え入れられる間に、一族郎党が立って挨拶をしていた。
その中には自分を馬鹿にし続けた憎々しい幼馴染までが並び、苦虫を噛み潰したような顔をして美坂姉妹に頭を下げていた。
「オホホホホッ!」
予想もしなかった光景に、歪みきった笑顔のまま笑う母。車から降りると、気味の悪い笑顔をした男が揉み手をして駆け寄ってきた。
「お嬢様方、ようこそいらっしゃいました、本日はご機嫌も麗しく……」
「どきなさい、今更媚を売っても遅い」
自分達をゴミ扱いし、こそ泥として笑い、早々に切り捨てて放り出した宗家の男共。今日はそこに、当主候補の娘を連れて凱旋した。
「本日はようこそ、さあ、お上がりなさい」
玄関から、一家を案内しながら先導する女主人。それは栞に「役立たず」「いつ死ぬのか?」と言い続けた憎き仇だった。
それが徒になって当主自ら命じたのか、娘達を値踏みするために来たのか、小間使いのように案内役をさせられている女を見て、胸がすくような思いがする母だった。
「お嬢様方だけ、ご当主様が面会なさいます。ご家族はこちらでお待ち下さい」
女中の一人に声を掛けられ別室に通される、残念ながら娘達とは一時お別れらしい。
だが宴席では、余興代わりに栞の力が披露され、祐一の婚約者である二人が次期当主候補として指名される手はずになっていた。
母と父は用意された小部屋で、当主と娘達の面通しが終わるのを待った。
美坂姉妹は床の間がある部屋に案内された。上座に敷かれた座布団は空席、下座の座布団に香里と栞が座らされた。
そこで栞は行儀よく正座して背筋を伸ばして座り、香里は面倒だったので足を崩してだらけて座っていた。
「ご当主様、御成ですっ」
時代劇のような呼び込みに香里は吹き出しそうになったが、栞は頭を下げ、当主の入場を待った。
やがて無遠慮な足音がズカズカと響き、障子にも触れること無く開閉を誰かに任せ、上座の座布団に勢い良く腰掛けた。
「よいしょっ!」
野太い、野卑な声が響き、一声で誰にも遠慮する事無く育った人物だと分かった。
「おいっ、千里眼と遠寄せを使ったのは、どっちだっ!」
何の挨拶も無く、無遠慮な恫喝が聞こえ、栞は頭を上げ、右手を少し上げて答えた。
「私です」
「使ってみせろっ」
何かが書かれた半紙を投げると、黒子のように佇んでいた女主人が拾って栞に渡した。その半紙には読みにくい字で「子供の頃の思い出の品」と書かれていた。
「はい」
秋子に言われたように目を瞑って集中し、半紙や当主から何かを読み取ろうとした。
残念ながら本人に触れる事はできなかったので、紙切れと筆跡から懸命に思い出を読もうとしてみた。
「出ました」
その物は床下から感じられ、手袋をした手を入れると、土の中から木彫
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