71部分:七十一.名を聞く
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七十一.名を聞く
七十一.名を聞く
人の名前を聞く時ですがすぐにその人の顔と形が予想できるような気持ちに包まれるというのに実際に会ってみますと想像していたのとは同じ顔の人ではなかったりします。昔の小説等を読んでみたりしていますと現存する他所の人の家のあの辺りのことなのだとうか、などと思い登場人物に関してましてはあの人みたいな感じなのだろうな、などと自然と不思議に比べてしまうといったことは皆がやっていることなのでしょうか。
またちょっとした時に丁度今人の言っていることもその目に見えているものも心で感じたいあらゆる物事もそういえばこんなことが何時かあったような気がするな、と思うのですがそれが果たして何時のことだったか思い出すことができなくてそれでも本当にあったり見ていたり感じたりした気持ちになるのはこれもまた私だけのことなのでしょうか。
こうした想像をしてみたり記憶がどうにも曖昧であったりした場合のことがおぼろであることはよくあることです。それで現実なのか幻想なのかわからなくなってしまいます。ですがそれはまことに真実のものである場合もまたあるのです。そういったことまで考えてみますとやはり不思議な気持ちになってしまいます。ただそこにあるだけではなくそこには他のものもあったりします。世の中というものは思っていることも目に見えていることもはっきりしなくてもそれが真実である場合もあるのでしょう。
名を聞く 完
2009・6・26
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