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徒然草
61部分:六十一.御産の時

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六十一.御産の時

六十一.御産の時
 帝の正妻であられるあの他でもない皇后様や他にも中宮様、そして女御の方々が皇子様や皇女様を出産される時にせいろうのようなものを屋根の端から転がして落とすようなことは別にならなくてはいけないことではありません。出産の後で胎盤が下がってくるというあの後産が長引かないようにおまじないをする為のものであります。後産が手短かに済めばこんなことはしません。
 これは一般庶民の間での風習からはじまったことでありました。実はこれといってきちんとした根拠もありません。ですが大原と大腹で演技がいいので大原からせいろうを取り寄せるのであります。昔の蔵にあった絵に庶民が子供を産んでいる場面にそのせいろうおオとしている様子が書いてありました。昔からあることであるのは間違いありません。
 実に古い風習でありそれが皇室にまで伝わっているのです。確かに御産は極めて大事なことです。それは皇族であれば尚更のこと、それは当然のことです。しかしそれも考えてみれば御産が速やかに終わればそれで終わりです。こうしたことをしなくてもいいのです。それを考えますとやはり御産の速やかであることが最もいいことであります。こう思っているのですは実際は中々そうはいきません。まことに難しいものであります。こうして思っていてもそうはならない、何よりも皇子や皇女といった方々に大事があればどうしようもありませんから。しかしやはりこうも思う次第なのであります。


御産の時   完


                  2009・6・16

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