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五十七.人の語り
五十七.人の語り
誰かが和歌について話をはじめましてその取り上げた和歌がつまらないものであった場合は白けてしまうものです。ちゃんと和歌を味わえる人ならばそんな和歌はよい和歌だと勘違いして語り出さない筈です。
どんなことでもよくわかりもしないことを話していることを聞いていると死にたくなってしまい耳が腐ってしまいます。
耳が腐ってしまうというのは極論なのかも知れませんがそれでも和歌は非常にいいものです。しかしいいものであるからこそその良し悪しにはかなりの差が出てしまうものです。だからこそのつまらない和歌を取り上げてこれがいいと得意げに語ったりするのを見聞きしますと溜息と共に白けてしまいます。和歌はいいものを取り上げなくてはいけません。だからこそつまらない和歌を語っているのはよくありません。しっかりと味わってそのうえで語るのでなければ。そんなこともわからないでどうするのでしょうか。本当にこれはその人の度量も見せてしまいますし厄介なものであります。和歌一つ取ってもそうした事柄がわかってくるものであります。よくよく注意しなければ迂闊にも出てしまったりします。若し自信がなければ何も言わなくてもいいのですからとかく得意げにもならないことです。あくまで静かに見てそのうえで述べる、何事に関してもそうでなければいらぬ恥をかいたり器を見られてしまうものです。まことに難しいことであります。
人の語り 完
2009・6・12
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