第三十二話 青から赤と黒へその十一
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「励んでおりまする」
「拙者を見てですか」
「はい」
まさにというのだ。
「真田殿の様に素晴らしくなりたい」
「そう思われて」
「日々鍛錬に励んでおります」
「その鍛錬を見ますと」
兼続の主である謙信も幸村に述べた。
「わたくしも頼もしく思いまする」
「上杉家にとってまたとない方であると」
「はい、この者が上杉家にいれば」
そうであればというのだ。
「どれだけ心強いか」
「そう思われるのですな」
「左様です、わたくしは常に一人ではありませんでした」
多くの家臣達に支えられてきたというのだ、家臣達は謙信であればと言うが謙信はこう考えてこう言うのだ。
「それは今もであり」
「直江殿がおられて」
「そのうえで」
まさにというのだ。
「今もあります」
「そうじゃ。人は一人で出来ることは限られておる」
信玄も言うことだった。
「何かを為すのならば」
「それならばですな」
「誰かが必要じゃ、わしもじゃ」
信玄自身もというのだ。
「弟達やお主達がいてじゃ」
「そうしてですか」
「今まで何かと出来た、源次郎お主もいなければ」
「何かをですか」
「出来なかった時がある、お主は川中島で獅子奮迅の働きをしてくれた」
「それでわしは助かったのじゃ」
信繁が幸村に言った。
「あの時九死に一生を得た」
「そうじゃ、わしもじゃ」
武田家の軍師として知られた山本勘助も幸村に言う、今の彼は大名として妻も迎えこの前子が出来た。
「川中島でお主によってじゃ」
「助けられたと」
「そうじゃ、あの時わしは死ぬつもりだった」
啄木鳥の戦術を謙信に見抜かれてだ、その責を取って自ら戦い一人でも多くの敵を倒すつもりだったのだ。
しかしだ、そこでだったのだ。
「だがな」
「それがしがいて」
「そうじゃ」
まさにそのおかげでというのだ。
「生きることが出来た」
「あの時お主達がいなくなればじゃ」
信玄も信繁と山本に言う。
「わしも困っておったわ」
「では、ですか」
「あの時は」
「お主達に死んでほしくなかった、そしてじゃ」
まさにというのだ。
「それを果たしてくれたのがじゃ」
「それがしですか」
「そうじゃ」
幸村自身に対して強い声で告げた。
「お主なのじゃ」
「そうでありますか」
「二人以外にも多くの兵がお主に助けられた」
彼と十勇士の奮闘、それによってというのだ。
「まことにな、ではな」
「これからは」
「これまでになく以後もないな」
「そこまでの武士にですな」
「なるのだからな」
「日々学問や鍛錬にですな」
「十勇士達と励むのじゃ」
中心であり親友であり義兄弟である彼等と、というのだ。
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