地を打つ大槌
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は何を見たのかももう思い出せない……事もない。あの幼い少年は、間違いなくヴォルフだ。再会までずっと忘れなかったのだから間違いない。
(でも……もう一つだけ)
僅かに思い出せる物があった……それを自覚すると同時に背筋が寒くなる。
それは、圧倒的な恐怖だった。気が付けば歯を鳴らしている自分がいる。……その正体がなんなのか分からないが、恐怖だけはその身に刻まれてしまっているかのごとく、思い出せた。
「あ……」
気付けば、腕の中にはかなりの数の木の枝が集まっている。心此処にあらずな状態でここまで出来たのは我ながら対したものだと思いつつ、ヴォルフの方へ向かった。……僅かに思い出した恐怖とその根源を振り払うように。
ヴォルフの方へ向かってみれば、彼は既に傷薬を塗り終えているようだった。
小さなジンオウガが怪我をしたのは、軽く巻かれている包帯からして右の後ろ足らしい。子供とは言え、全力で走ればドボルベルクを引き離すことなど容易なことだろうが、肝心の足を怪我してしまい走れなくなったのだろう。
警戒は全く緩んでおらず今でもヴォルフを退かすために?こうとするが、その度にヴォルフが腹部を指で突いて黙らせている。
「はい、これ」
「助かる」
ヴォルフはそう言いながら神無が置いた枝の束から、木の枝を何本か取ると長さが同じになるように短く折ると、細い紐を鞄から取り出し、枝を包帯の上に添えると紐で縛り上げた。
「それって……」
「添え木だ。どうも、ドボルベルクから逃げている途中でやらかしたらしい」
だから岩の周りをグルグルと回って、痺れを切らしたドボルベルクが岩の破壊を試みたのだ。
「大丈夫なの?」
「ああ。骨は折れてない。奴の尾が掠ったのか、衝撃で跳ねた石で傷ついたのか……如何せん、毛が多くて邪魔だ。剃るほど時間はないしな……」
よく見ると、以前見たジンオウガ(大人)に比べると、全体が白い体毛で覆われており、黄土色の甲殻があまりにも少ない。成体に比べ、防御力はあまりにも低そうだ。
ヴォルフの手付きは素早く、相当に慣れているようだった。包帯は関節を補強して患部への負担を抑えるように巻いている。
「ジンオウガってどんな風に生活してるのかな?」
何故、こんなところに子供のジンオウガがいるのか気になって聞いてみた。
「……分からん。だが、こういう子供は親と一緒に暮らすものなんだが……」
ヴォルフはそう言って周囲を軽く見渡す。すぐそばにある大岩を除けば周囲にあるのは聳え立つ木々と草ばかりか、水の音と虫の声が小さく僅かに響くのみと静かなものだ。
「ウウウ〜!」
口を縛られたジンオウガの子供が声を上げる。いい加減に退け! と言いたいらしい。
「終わった」
ヴォルフはそ
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