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人狼と雷狼竜
地を打つ大槌
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た岩の方へと向かった。





 (くさむら)に身を潜めていた神無は、ヴォルフがドボルベルクを打倒したのを見て呆然としていた。
 ヴォルフが強い事は分かりきっていたことではあった……が、ここまで人間離れした強さを見せ付けられるのは初めてだった。不殺とは言え、あの巨体を前にして圧勝に等しい。
 ここまで来ると『人狼』とは忌名ではなく、称号の類なのでは? と疑いたくなってくる。
 と、ヴォルフは刀を収めはしたが、こちらには来ずにドボルベルクが叩いていた大岩の方へと向かっていく。そして、裏へと回り込むと……
「アォン!」
 と、甲高い声が響いた。
「……え?」
 何となく覚えのある声だった。だが、それの正体は霞がかったように朧げで思い出せない。
 しかし、気付いた時には走り出していた。訳も分からずに全力で駆け出す……ここ最近の訓練の成果か、以前の自分よりも速く走れているような気がするのを他人事のように考えたが、今はそれどころじゃない。
 大岩へと辿り付き、ヴォルフが向かった方へと回り込み……その目が捉えたのは、組み伏せた相手を強引に手当するヴォルフと、?く事も出来ず……しかし、ヴォルフを警戒の目で見据えている……小さなジンオウガだった。
「あ……ああ……」
 搾り取るような声が自分の喉から出てくるが、神無はそれを自覚していない。
 呆然とそれを見詰めるが、その目が焦点を失って何も捉えておらず、彼女には全く別の光景が見え隠れしていた。

 引き離される自分、幼い少年、閉鎖された家、悲しみを堪えた僅かに見覚えのある異国の美丈夫、森の中へ消える少年、捜索に出る大人達、地を踏みしめる巨体の竜、戯れる少年と小さな……、

「神無」
「えっ!?」
 突然の声に神無は我に返った。
 見ると、小さなジンオウガを組み伏せて馬乗りになることで自由を奪ったヴォルフが、不思議そうな顔でこちらを見ていた。小さなジンオウガも自分に気づいたようで唸り声を上げるが、口に紐を巻き付けられて開けられなくなっている。
「ご、ゴメンねヴォル君! ……私……」
「何に謝っている? 荷物の中に包帯と傷薬があっただろう? 出してくれ。それと、細い木の枝を集めて来てくれ」
「え? うん。分かった」
 指示を出された神無の行動は早かった。ここにも訓練の成果が出ている。鞄に入っている必要な物を素早く取り出すのも訓練として受けていたからだ。
「はい!」
「すまんな」
「じゃあ、木を取ってくるね」
「ああ」
 木の枝は直ぐに見付かった。何に使うかは分からないが、必要と言われれば集めるだけだ。だが……ヴォルフは何故、子供とは言え、ジンオウガの手当などしているのか……それが理解出来なかった。
 さっきのは断片的な光景は、過去の記憶だろうか? 今で
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