地を打つ大槌
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無もいて二人で役割分担するのだが、今日は夏空一人だ。あまり手の込んだものは作れない可能性がある。
「えっと……夏空?」
「はい?」
小冬の遠慮がち……というより、何か言いにくいのか珍しく歯切れの悪い口調に、夏空は小首を傾げた。
「私も……一緒に作って良い?」
その言葉で、夏空は小冬の今朝の言葉を思い出し、満面の笑みを浮かべた。
「はい! 一緒に作りましょうねぇ〜」
「……ありがと」
夏空の言葉に目を逸らして小さく告げた小冬は、休憩所へと小走りで向かっていった。
「えっと……小冬ちゃんも作るんですか?」
「……料理出来たっけ?」
何故小冬が急に料理を作りたいと言ったのか分からず、話の見えない梓と、どこか不安げな椿が夏空に尋ねる。
「出来ないわけではないですよ? ここ最近、夜中とかに調理したり、料理を勉強したりしてますから」
「ちょっ!? 夏空っ!」
あとは経験ですね〜と、夏空は小冬の抗議の声を遮断して、拾った空薬莢を編み籠に入れた。
彼女の使う火砲は『砲』と言うだけあって、小銃とは比較にならない大口径だ。火砲は基本的に20ミリ以上の口径を用いるものだが、彼女の撃つ青熊筒は40ミリだ。薬莢の一つ大きさは掌では包み込めないサイズである。
「そんな訳ですから、ちょっと質は落ちるかもですけど、私が監督しますから味は保障しちゃいますよ?」
「じゃあ楽しみにしてますね」
「楽しみ〜」
梓は小冬が何故急に料理を作ろうとしだしたのか、何となく分かったような気がしつつも、小冬が夏空の監督の下で作る料理には一抹の不安と少しばかり大きな期待を抱いた。
「梓? 何か嬉しそうだけど……」
知らず知らずのうちに微笑んでいたらしい。そんな梓を不思議そうに小首を傾げながら見詰める椿。
「人って変われるものよねって思っただけよ」
「?」
梓の言葉に椿は小首を反対側に傾げて疑問を示した。円な瞳は相変わらずいつものボンヤリとしていた。
自分の相棒は全く変わらないな……と、呆れ半分、安心半分に思いながら、いつまでも立ち止まったままの椿の手を引いて休憩所に向かう。
「ヴォルフさん。何してるかな?」
唐突に椿が呟くように訪ねてくる。
「ん〜……案外お昼ご飯でも食べているんじゃない? 初日から体力を無駄には出来ないから神無に無理させるような事はしてないと思うけど」
「無事だと良いけど」
「当然でしょ」
そんな取り留めのない会話をしながら休憩所へと入って行った。
硬い重量物が、地を打ち付ける鈍い音が森の中で響き渡る。
音の出処は、人の三、四人は纏めて潰してしまいかねない岩塊のような異形の槌だ。着弾点は凹んでいる。
如何にも鈍重そうな奴にとっては、俺のような人間は対処し辛いらしい。先程から何度
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