開戦!二極戦線オケアノス
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
彼女を死なせる訳にはいかないのだ。ドレイクが守る必要のない女傑である事は考慮に値せず、故に守戦に長けたエミヤと回復役の玉藻の前が彼女の近衛となる。
ネロの下にいるのはマシュ、アイリスフィールと黒髭。黒髭が微塵の弛みもなく裂帛の殺意を吼える。それは大海賊の本気、全身全霊を振り絞る正真正銘の全力である証左だ。
剥き出しの上半身、鍛え上げられた筋骨が膨張し、凄絶な眼光が光る。右腕には鉤爪のついた手甲を、左手には拳銃を。静電気に弾かれたように黒い髭が尖り、無造作に切られていた髪が俄かに総毛立つ。
「――華の殺り合いだ、この黒髭の首ぃ、簡単に奪れると思うなやぁッ!」
嵐の航海者、黒髭の旗艦が海賊の誉れを謳い、太陽を落とす女に先んじて切り込んだ。英雄船の船首に正面から突撃し、超質量同士がぶつかり合う。瞬時に二体一対の女海賊と血斧王が飛び込んできた。マシュが咄嗟に迎撃せんとするのを、黒髭が骨太に笑って制し自ら突貫する。
「俺の獲物だ、お嬢さんは別に当たりなッ!」
自らの獲物と定めたのは嘗ての部下。黒髭の旗艦に乗り込んで、着地してくるなり長身の女アン・ボニーの顔面を殴り飛ばす。
鉄拳が女の残留霊基を吹き飛ばし、銃口を向けて射撃した。させじと矮躯の女賊メアリー・リードがカトラスで斬りかかってくるのを手甲で受け止めた。隔絶した筋力差、踏んだ場数と海賊としての格――サーヴァントの残骸である彼女たちと比較するのも烏滸がましい。手甲で刃を受けるやその腹に情け容赦なく蹴撃を叩き込んで吹き飛ばし、血斧王の大斧の一撃を飛び退いて回避する。
メアリーを蹴り抜いた脚には浅い切り傷があった。メアリーもただでは蹴り抜かれず、その脚を切り裂いていたのだ。しかし微塵も痛痒を覚えた様子はなく、連続して銃撃をアンに浴びせながら哄笑した。悉く回避するアンの踊るような体捌きなど気にも留めず。
大海賊の気炎が彼を巨大化させているようだった。陽炎のように立ち上る気迫に、味方であるはずのマシュは気圧される。これがあの、終始ふざけていた黒髭なのか? まるで別人のようで、故にこそエドワード・ティーチが如何に怒り狂っているのかが分かる。
「彼奴らは黒髭に任せる。来るぞマシュ! 余も援護する、往け!」
続いて飛び込んできたのは――双巨斧を操る牛面の怪物であった。女海賊らと血斧王を合わせてなお凌駕する神話の反英雄、迷宮の主。
その異様なまでの威容にマシュは歯を食い縛り大楯を構えた。そのマシュの霊基に魔術が装填される。ネロが魔術礼装の機能を起動して少女の身体能力を向上させたのだ。襲い掛かってくる怪物の斧と、強化されてなおマシュを大幅に上回る怪力が彼女の全身を震えさせた。
「エ■……■■ア、レ……■■■■■■――ッッッ!」
「くぅっ!?」
護る者故
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ