幕間「決戦寸前、号砲を撃て」
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は知らず安堵する。
寄り掛かってこい、俺はお前達を負けさせやしない。俺も、負けない。不敗の将は自陣を奮い立たせる。不敵に笑うのだ、指揮官は動じない。鉄壁の自制心がある。
まだだろう? まだあるんだろう。晒していないものが。その全てを暴いてやる、全てを叩きのめしてやる。充溢した気迫が炉の火の如く盛っていた。
しかし――ロマニの声が、固い。
『いや……待ってくれ。これは――』
真名は知らない。顔も知らない。だが亡霊のように嵐を切って接近してくる船には、
輝く兜のヘクトールがいた。
史実に女海賊として名を残すアン・ボニーとメアリー・リードがいた。
血斧王エイリーク・ブラッドアクスがいた。
迷宮の怪物アステリオスがいた。
裏切りの魔女の幼き日の姿メディアが。
アルゴー号の船長イアソンが。
姿は見えずとも船内には囚われのエウリュアレが。
そして言うまでもなく、五体満足のアルケイデスがいた。
だが、それは――全て。総てが、
『――全部死体だ! その船のサーヴァントは全部死んでる! 霊基の残骸、残留霊基だ!』
英雄船は、事実幽霊船だった。
英雄らは眉を顰める。士郎もまた顔を歪めた。
真実、不快だった。そうか、そう来るのか。そうしてしまうのか!
どこまで愚弄する、どこまで弄ぶ、英霊は所詮使い魔、使い捨ての駒だと? いいだろう、そちらがそのつもりならば。
「――叩き潰す。捻り潰す。人間の尊厳、人間の誇りを踏み躙る下劣畜生がッ!
皆、勝つぞ!」
士郎の檄に怒気の滲んだ咆哮が応じた。
「部隊を再編する! マシュ、ネロを頼む!」
「え、わ、私は……!」
「お前しかいない。頼む」
「……はい、先輩もご無事で!」
「ああ。――ランサー、セイバー! お前達は俺と来い!」
「応ッッッ!!」
「ええ」
光の御子クー・フーリンの眼が怒りの余り充血している。黒き聖剣王アルトリア・ペンドラゴンが冷徹に応じる。オルタは己をセイバーと呼ぶ男の怒気を感じ、感化されるように竜の猛りを腹に潜めた。
矢継ぎ早に指示を飛ばす鉄心は、しかし熱く、頭は極めて冷静だった。
「他の面々はネロの指揮に従え。エドワード、お前も頭だ。ドレイクともどもお前らは勝手にやってくれ。それが一番強い!」
「ハッ! わかってんじゃないのさ色男! そうさせて貰うよッ!」
「……おうよ、俺も乗るぜ。久々にマジギレちまった。俺の部下だった奴の骸を使うたぁなぁ。ギャハハハ! 無様も無様……ブッ殺す!」
二隻と一隻が互いを射程圏内に捉える。今、激烈な死闘が幕を上げんとし――衛宮士郎は静かに詠唱をはじめていた。
体は剣で出来ている
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