「封鎖戦域クイーンアンズ・リベンジ」
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
直上より墜落した報復の徒は、鍛治神ヘパイストスが彼の為だけに鍛造した大剣を振り翳す。
狙われたのは士郎ではない。ネロでも、ましてやアイリスフィールや玉藻の前を狙う素振りすら見せなかった。真っ先に狙われる恐れのある士郎やネロ、二騎のキャスターと黒髭は一塊になっていた。彼らを護るは聖なる楯と蒼き騎士王、光の御子、黒王に錬鉄の弓兵である。守りの堅牢な彼らよりも、この場で最もアルケイデスの脅威足り得ない者が狙われるのは必然であった。
狙われたのは、アタランテである。
生前のヘラクレスという、天涯の怪物を知る狩人は、自らを射抜く殺気に総毛立つ。数多の英雄が集ったアルゴノーツに在りて、尚も圧倒的だった大英雄が己を殺さんと迫るのは悪夢だった。
だがそれで怯懦に縛られ、その駿足を翳らせる程度の狩人ではない。アタランテは瞬時に飛び退き彼の斬撃を躱す。
アルケイデスの豪剣が『アン女王の復讐号』の甲板を抉る。彼の腕には戦神の軍帯が巻かれ、その神気が只でさえ強力な剣撃を災害のそれへと高めていた。
魔大剣マルミアドワーズを振り下ろしながらの着地、その予備動作による剣圧すらもが殺人的な破壊を撒き散らす。完全に躱したにも関わらず、己の躰に刻まれる裂傷にアタランテは苦悶した。直撃どころか、掠めただけで挽き肉になりかねない。耐久が最低ランクしかないアタランテなど、一度でも直撃を受ければ防禦の上からでも即死するだろう。
「――ああ。アルカディアの狩人よ」
不意に、邪悪な喜悦に染まった悪意が、口を開く。聞くな、とアタランテの本能が警告した。
天穹の弓で矢を射掛ける。だがそれが功を奏さないのは明らかだった。神獣ネメアの谷の獅子、その皮は人理に属するあらゆる産物を拒絶する。理不尽なまでのその性能は、これまでの交戦で嫌というほど思い知っていたはずだ。
だのに矢を射掛けるのを止められない。アタランテが狙われた事で、その増援に入ろうとする英霊達の動きが引き伸ばされ、アルケイデスの紡ぐ言葉だけが通常の時間軸に置かれたように耳に届く。
「『カルデアの』お前なら知らぬのだろうが、この特異点には『月女神アルテミス』がいたぞ」
「――なんだと?」
聞く事が出来たのはそこまでだった。注意を引くやアタランテの腹部にアルケイデスの蹴撃が炸裂する。ぐぁッ――アタランテは吐瀉を吐いて吹き飛ばされ、マストに背中を強打した。
帆がはためいた。……何故殺さなかった? 戦神の軍帯で神気を込めていれば、今の一撃でアタランテの胴に大穴を空けられていたはずである。舐められた? 手心を加えられたとでも? 有り得ない、何が狙いなのか。
霞んだ目に力を込め、睨み付ける先で光の御子と互角に切り結ぶ『神の栄光』の影法師がいる。神速の魔槍術、神代の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ