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人理を守れ、エミヤさん!
サドンデスだ士郎くん!
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へ寄り添う常勝の王。彼と我が共にあるならば、万が一にも敗走など有り得ないと高らかに謳う。
 禍々しく咆哮する、天昇る二柱の水龍。
 只管に尊い黄金を煌めかせる、究極斬撃。
 激突の瞬間、光が死に、音が絶える。刹那の拮抗は無限に等しく――果たして最強の幻想は、対界に至った暴龍の咆哮を蒸発させた。
 周囲数百メートル四方もの海水と、天を覆わんとしていた暗雲を束ねた、対界宝具を根刮ぎ蒸発させたのだ。その極光は嘗てない煌めきを伴い、日輪の輝きにも劣らない燐光の雨が燦々と降り注ぐ。

「あ、姐さんっ、お、俺らの船が翔んでますぜ!?」
「黙ってな、舌噛むよ! ――にしても、ハハハハ! コイツはご機嫌だッ! 船で空を翔ぶなんてねぇ!」

 海賊にとってこの貴き幻想の輝きよりも、自身の船が空に在る事の方が驚嘆に値するらしい。
 大穴の空いた海を埋めんと、辺りから海水が押し寄せている。その流れの激しさは渦潮を無数に生み、大海嘯の轟音は世界の終わりを如実に物語る。
 宝具同士の撃ち合いは、聖剣が上回った。その事実に、宝具を放った直後に跳躍していた大英雄は歓喜する。――それでこそ世界の救済者達。お前達ならばこの身を超える事も叶うだろう。
 その称賛の念は翳る。潰れて消える。膨れ上がる憎しみの呻き。十二の栄光の内にある最大規模の試練(きりふだ)が踏破され、純化していく復讐者は恍惚としていた。

「見事だ。――この賛辞を送るのはこれで幾度目だ? 楯の少女、カルデアのマスター、アイルランドの光の御子……そして誉れ高き聖剣の王。どれほど讃えてもまるで足りぬ、お前達は真実、無上の英雄達だ」

 空に在る黒髭の旗艦、そのマストの上に、赤黒い復讐者が現れていた。
 だがその様子がおかしい。その偉容に負の想念が無かった。今の彼は雄大な山脈のように雄々しく、広大な平原の如くに広く、無辺の大海原のように深い。爽快さすら感じる暗黒の波に呑まれ逝きながらも、高潔な英霊の霊基(ほんのう)が微笑んでいたのだ。

「へ、ヘラクレス……?」

 ネロが呆然と呟く。聖杯の支配、何者かの呪い――それすらも、大英雄を完全に支配し切れてはいないのだ。
 だがその意志が表出するのは、これが最後なのかもしれない。華の皇帝の憧れた、驍勇無双の武人。その成れの果ては限界を越えていてなおも口惜しげに嘆いた。

「叶うならば本来の私として対峙したい所だったが、生憎とそうはいかん。警告しよう、人理の守護者達。なんとしても星の開拓者の船を護るがいい。さもなくば――」

 遺志が途絶える。代わりに表れるは反転存在、無双の勲を打ち捨てる卑劣外道。
 噴き出す邪悪な魔力の噴流が、夥しい呪詛の思念と共に嘲笑した。

「――ああ、貴様らの旅路を潰えさせてやろう」
「ッ、来るぞ!」

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