第三十二話 青から赤と黒へその二
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「今の我等がある」
「我等は殿のことを話したまで」
蜂須賀も他の者と同じ考えだった。
「まさにな」
「殿のお話でありです」
蒲生は幸村に直接話した。
「我等はその殿のお供でしかありませぬが」
「いや、それがです」
まさにとだ、幸村は織田家の家臣達にさらに話した。彼の赤い服と織田家の青い服が見事に対比している。
「それがしにとっては」
「我等の働きもですか」
「心を強く打ち」
そしてというのだ。
「後学にも思いました」
「そうなのですか」
「羽柴殿については」
ここで幸村は羽柴を見て話した。
「百姓から国持ち大名になられたのですから」
「いや、運がいい」
羽柴は自分のことを笑って話した。
「それがしは」
「そう言われますか」
「全く以て」
これが彼の言葉だった。
「それだけのことです」
「いやいや、見事な立身かと」
「百姓の倅が大名になったので」
「親孝行のお話もです」
それもというのだ。
「しかもねね殿と遂に」
「いや、そのことはまさに幸せの極み」
幸村が今出した話にだ、羽柴は笑って応えた。
「子が生まれたことは」
「捨丸殿にですな」
「お拾と二人続けて」
「後はそのご子息達を」
「大事に大事に育てています」
今現在そうしているというのだ。
「まことに」
「左様でありますな」
「そしてです」
「お二人にですな」
「捨丸が家督を継ぎ」
羽柴家のそれをというのだ。
「お拾にもです」
「すくすくとですな」
「育ってもらいたいと考えています」
「左様ですな、やはり」
また言う幸村だった。
「子はかすがいです」
「左様ですな」
「羽柴殿は長い間でしたな」
「欲しいと思っていましたが」
我が子、それがだ。
「ようやくです」
「それが適って」
「ほっとしてこれ以上はないまでにです」
まさにというのだ。
「幸せを感じています」
「お子がいることこそが」
「最高の幸せです」
こうも言うのだった。
「それがしそれがわかりました」
「国持ち大名になられ官位を得られても」
「それに勝るのがです」
「お子ですな」
「はい、身を立てて母上やねねに楽をしてもらい」
それが出来るまでになってというのだ。
「国持ち大名、そして」
「朝廷から官位を頂いて」
「恐悦至極ですが」
身に余る幸せだが、というのだ。
「しかし」
「お子にはですか」
「負けます、栄耀栄華よりも」
羽柴は既に馳走を常に食べて絹の服も着られる様になり立派な城の中の御殿にも住んでいる。だがというのだ。
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