ターン5 多重結界のショータイム
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落ちる。打ち所がよほど悪かったのか、全身だけでなく頭が割れるように痛い。目はかすみ、ぐるぐると不安定に世界が揺れている。そんな横向きの風景を、燃えるような赤色が自分に向けてゆっくりと近づいてくる様子が辛うじて彼の視界に映った。やがて目の前で立ち止まったその人影が、おもむろにかがんでこちらに手を伸ばす。朦朧とした頭でその真意を判断することもできず、反射的に手を伸ばしてそれを掴むと、力強く自分の体が引っ張り上げられて近くの木にもたれかけるような姿勢に直される。
「なに、を」
「軽い脳震盪か。あとはまあ、骨折があるかどうか。痣やらなんやらはキリがないから放っておくぞ、勝手に自分で治しとけよ。じゃあアタシはぼちぼち移動するから、いい人に拾われな」
「……待て!」
軽く全身を見渡し、ざっくりと緊急性はないと判断。さっさと背後のバイクに乗り込もうとする彼女に、ほんの少しだけ持ち直した蜘蛛が苦しげに声をかける。
「んだよ、これ以上ぐずぐずしてたら雑魚がわんわん集まってくるだろうが。いくらアタシでも馬鹿正直にその辺のチンピラレベルの奴なんざ1人1人相手してらんないぜ、それこそ朝になっちまう。これも仕事だ、もうちょっとこの辺一帯をひっかきまわしてやらないとだしな」
バイクの側面にひっかけてあったヘルメットを無造作にかぶり、発車のために地面を蹴る。再びぼやけてきた蜘蛛の視界の中で闇に消えようとするその背中に、力を振り絞ってもう一言だけ叫んだ。
「……覚えていろ、次こそは、必ず……!」
無理に叫んだことで、蜘蛛の体力に今度こそ限界が来た。完全に視界がブラックアウトする寸前、場所を変えつつある彼女が振り返りもせずに片手を上げて彼に応える姿が見えた。
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