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翠碧色の虹
第四十二幕:見えない虹に気付く時
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自然と高揚感に包まれる。この感覚は昔、遠足で列車が出発する時に味わった感覚に近い。

「普通列車、まもなく発車いたします。ご乗車されるお客様はお急ぎください」

アナウンスと共に、さらにエンジンの音は大きくなる。七夏ちゃんも俺と同じ事を思った様子で、窓の外と俺とを交互に見てきた。七夏ちゃんが何か話したみたいだけど、よく聞き取れなかった。
列車の扉が閉まると、エンジンの音が少し断たれたようで、七夏ちゃんの声も聞こえるようになった。

時崎「七夏ちゃん、さっき何か話した?」
七夏「え!? なんでもないです☆」

景色がゆっくりと動き始め、大きな警笛音が鳴り響く。七夏ちゃんは流れてゆく景色を眺めているけど、俺は不思議に思って訊いてみた。

時崎「七夏ちゃん、今日は小説、読まないの?」
七夏「え!?」

七夏ちゃんは少し驚いた様子だけど、その後から笑顔が追いついたみたいに見えた。

時崎「この前の蒸気機関車イベントの時は、出発後すぐに小説を読んでたから」
七夏「えっと、この前はトンネルが多くて、景色も時々しか見えませんから」
時崎「なるほど」
七夏「それに、お母さんも一緒だったから☆」
時崎「な、なるほど」
七夏「くすっ☆」
時崎「七夏ちゃんは、凪咲さんと一緒の時も、そうでない時もあまり変わらないと思うけど?」
七夏「あまり、列車内でお話しし過ぎると、後で注意されます」
時崎「確かに、でも今は、人も多くないし、あまり大きな声でなければ大丈夫だと思うよ」
七夏「はい☆」

七夏ちゃんは再び、窓の外を眺める。俺も七夏ちゃんと窓の外を一緒に眺める。

七夏「もうすぐ、海が見えます☆」

七夏ちゃんがそう話した少し後で、列車の車窓からはキラキラと輝く海の光が飛び込んできた。海岸沿いを走る列車に合わせるかのように海鳥が舞っている。その様子から魚も沢山居るようだけど、よく見えない。俺は少し身を乗り出して海を眺めると、そこに大きな鯨がゆらゆらと・・・って、鯨!?

時崎「七夏ちゃん!?」
七夏「くすっ☆」

鯨のマスコットを車窓の海に重ねる七夏ちゃん。鯨はゆらゆらと揺れているだけだが、本当に海の上を泳いでいるようにも見える。

七夏「こうすると、クジラさん、泳いでませんか?」
主 「なるほど、面白いね!」
七夏「はい☆」
時崎「七夏ちゃん、そのままで!」
七夏「え!?」

鯨を海に浮かべる七夏ちゃんを1枚撮影した。

列車はしばらく海岸沿いを走っていたと思ったけど、短いトンネルを越えただけで車窓は海から都会の風景に変わっていた。この景色も何度か見ているので、列車がそろそろ隣街の駅に到着する事が分かった。

時崎「七夏ちゃん、もうすぐ隣街の駅に着くよ」
七夏「はい☆」

列車を降
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