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翠碧色の虹
第四十二幕:見えない虹に気付く時
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「はい☆」

今度は俺が先に列車に乗り、七夏ちゃんが後を付いてくる。車内に人はそれほど多くなく、空いている。俺は海が見える方の窓際の席の前で、七夏ちゃんを待つ。

時崎「七夏ちゃん! ここでいいかな?」
七夏「はい☆ ありがとうです☆」
時崎「どうぞ!」

俺は七夏ちゃんに窓側の席を案内した。蒸気機関車イベントでは七夏ちゃんが俺にしてくれた事だ。

七夏「え!? 柚樹さん、窓側でなくてもいいの?」
時崎「ああ、どおして?」
七夏「えっと、柚樹さん窓からの景色を撮影するかなぁって」
時崎「ありがとう! 景色と七夏ちゃんを一緒に撮影したいから!」
七夏「あっ・・・」
時崎「七夏ちゃん! 早く!」
七夏「はい☆ ありがとうです☆」

七夏ちゃんが窓側の席に座り、俺もその隣に座った。窓の外を眺めている七夏ちゃんを俺は眺めていると、七夏ちゃんと目が合った・・・窓ガラスに映っている七夏ちゃんと。

七夏「柚樹さん」

七夏ちゃんがこちらを見てきた。

時崎「どうしたの?」
七夏「急がせてしまったのに、ごめんなさい」
時崎「そう言えば、さっき普通がどうとか話してたけど」
七夏「はい」
時崎「隣街で一駅だから、普通でも特急でも同じだと思うけど、隣街の駅も特急は停まるからね」
七夏「えっと、そうではなくて・・・」

背後から大きな音が迫って来る。その音で、俺は七夏ちゃんが何故謝ってきたのかを理解した。

時崎「特急列車!?」
七夏「はい」

特急列車が普通列車の横に並んで停車した。

「特急列車、まもなく発車いたします。ご乗車されるお客様はお急ぎください」

時崎「特急の方が先に隣街に着くみたいだけど、急いで乗り換える?」
七夏「えっと、七夏はこのままがいいかな?」
時崎「七夏ちゃん、水族館へお急ぎみたいだったけど?」
七夏「特急は人が多いですから」
時崎「なるほど」
七夏「普通だとこうして、柚樹さんと一緒にのんびりできます☆」
時崎「そ、そう・・・」

自分の想いを素直に届けてくれる七夏ちゃんに対して俺は、同じように振る舞えず、恥ずかしくて七夏ちゃんから目を背けてしまう。
そのまま丁度、特急列車が出発してゆく様子を眺める形となり、少し救われた気分だけど、眺める対象はすぐに無くなってしまった。
ゆっくりと七夏ちゃんの方に視線を戻すと、七夏ちゃんは先程と同じように、窓の外を眺めていた。

再び、大きな音が聞こえてきた。

七夏「あっ♪」

その音を聞いた七夏ちゃんが、こちらを見て笑みを浮かべた。

七夏「柚樹さん☆ もうすぐ出発です☆」
時崎「そうみたいだね!」
七夏「くすっ☆」

ディーゼルエンジンの力強く大きな音。出発時刻が迫っている事が伝わってきて、
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