第四十二幕:見えない虹に気付く時
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、カニの幼生さんではないです☆」
時崎「え!?」
七夏ちゃんの言葉に俺は驚く。このくるくると無数にまわっている生き物が、カニの幼生ではないとすると・・・。
七夏「見えませんか?」
時崎「え!?」
俺は、目を凝らして水槽を眺める・・・くるくると無数にまわっている生き物以外に、何も見えない・・・。
七夏「えっと、この辺り・・・です☆」
俺は、七夏ちゃんが教えてくれた付近を目を細めて見てみる・・・。すると、なにやら雪の結晶のような透明な物体が、すーっと七夏ちゃんの手の付近を横切ってゆく。その透明な物体は一瞬キラッと虹色のような光を放った。その光が水槽照明の反射光である事はすぐに理解できた。
時崎「あっ!?」
七夏「くすっ☆ 見えました? ゆらゆらと♪」
時崎「あー! これが、カニの幼生だったのかっ!!!」
俺は更に、目を細めて水槽を眺める。すると、今まで全く気付かなかったカニの幼生が、次々と浮かび上がってきた。その数は七夏ちゃんの話すとおり7匹確認できた。カニの幼生は、とても透明度が高く、例えると、餡蜜や蜜豆の液体の中に浸かっている透明な寒天を探すような感覚に近い。七夏ちゃんはすぐに、カニの幼生を見つけていた。七夏ちゃんには見えるのに、自分には見えなかった・・・これが、どれだけ、もどかしく切ない事かを思い知らされた。俺は、七夏ちゃんのおかげでカニの幼生の存在に気付く事が出来た。でも、七色の虹は、まだ七夏ちゃん自身確認できていない・・・七夏ちゃんは、そんな切ない想いを、ずっと今まで・・・。
七夏「柚樹さん?」
時崎「・・・・・」
七夏「柚樹さん☆」
時崎「え!? ああ、すまない・・・」
七夏「どおしたの? 難しい顔してます」
時崎「カニの幼生か・・・奥が深いなーと思ってね・・・」
俺は、難しい顔に別の理由を当てて七夏ちゃんに返事をした。
七夏「くすっ☆」
因みに、俺がカニの幼生だと思い込んでいた無数の生き物は、カニの幼生の食べ物になるらしい。いやこれ、言われないと、誤解してゆく人も、いるんじゃないかな・・・なんて思ってしまう。
時崎「そう言えば、七夏ちゃんって『かに座』だよね!?」
七夏「え!?」
時崎「星座・・・天美さんがそう話してなかった?」
七夏「はい☆」
時崎「流石、かに座の女の子だねっ!」
七夏「それって関係あるのかなぁ?」
時崎「さぁ?」
七夏「くすっ☆ こっちのお魚さんは・・・」
時崎「メクラウオって書いてあるね。目が退化して無くなったんだって」
七夏「え!? 目が無くて何も見えないのかな?」
時崎「いや、きっと見えてると思う!」
七夏「???」
時崎「見えなくても、ずっとそのままという事は無いと思う。見えない事に気付いた時、見える事が始ま
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